The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

sideルヴィア

ーーーーー…あれは、結婚して二週間ほどたった夜だったろうか。

あの頃の俺は…まだ馬鹿だった。

独身時代のノリで、仕事帰りに部下達とバーに飲みに行って、優雅に日付が変わってから帰ったのだ。

それがどんなに愚かなことかも知らず。

いつものごとく、飲み始めてあっという間に酔っ払った俺は、意識を飛ばしてしまった。

部下達も慣れたもので、千鳥足の俺を自宅まで送ってくれた。

マンション下のエレベーターに乗った辺りで、呂律の回らない舌で、「あとは自分で帰るから大丈夫」と強がり。

「本当に大丈夫なんですね?俺達帰りますよ?」と不安げに念を押す部下を送り返し。

エレベーターに乗り、自宅のある階のボタンを押した。

俺はその日、二つの罪を犯した。

一つ目は、フューニャにもろくに連絡を入れず飲み会に行ってしまったこと。

普通の夫婦でも、これは怒られても仕方ない過ちだ。

連絡は一応したのだが…「今日夕飯要らないから」というメールを送ったのは、午後七時。

その頃にはフューニャはとっくに夕飯を作って待っていただろうに。俺はよく考えもせずに、そんな愚かなメールを入れて、それで妻への連絡義務は果たしたと思っていた。

タイムマシンがあるなら、あのときの自分をぶん殴りに行きたいくらいだ。

しかも、「夕飯要らない」という連絡だけをして、何時に帰るよ~とか、何処に行くよ~とか、そういう情報は一切知らせなかった。

今、同じことをやれと言われたら…恐ろし過ぎて出来ない。

それなのに俺はあのとき、実際にそんな恐ろしいことをしてしまったのだ。

そして、二つ目の罪。

それは、考えなしに…べろべろになるまで酔っ払って帰ったことだ。

なんとかエレベーターから歩いて自宅に帰ってはきたものの、鍵を開けて中に入るなり、俺は玄関で靴を脱ぎ捨てて、その場で熟睡してしまった。

これは独身時代の癖である。

飲み会から帰った日の朝は、玄関先の廊下で目が覚めるのが常であった。

俺は自宅でフューニャが待っていることも忘れ、いつものようにそのまま廊下で寝ていた。

しかし。




不意に、額に冷たさを感じて…俺は目を覚ました。




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