The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「…?」

薄く目を開ける。

飲み過ぎたせいか、軽い頭痛がする。

しかも、背中が痛い。

あぁそうか、俺廊下で寝てるのか…と思い出し。

そして、また額に冷たさを感じた。

一体どうしたことかと考えたが、考える必要はなかった。

顔が濡れていた。額に、ぽたぽたと水滴が落ちているのだ。

冷たさの原因はこれだ。

天井から、水滴が滴っている。それが俺の顔の一点に落ちているのだ。

しかし、何で天井から水滴?

雨漏りかと思ったが、今は雨は降っていないはずだし、何よりここはマンションだ。上の階にも人が住んでいる空間があるのだから、雨漏りなんてことは有り得ない。

ん?もしかして上の住人が原因か?水出しっぱなしとか?

いや、でもそれにしては…。

「…うわっ!?」

そのときに俺は、暗闇の中にぼうっと立っている人影を見つけた。

暗闇の中なのに目がぎらぎらと光り、小柄なはずなのに地獄の閻魔のようなオーラを纏って、そこに立っている。

フューニャは何かを抱えるように持って、俺の上に掲げていた。

手に持っているものは何なのか、一瞬鈍器かと思ったが、違っていた。

フューニャの手には、二リットルのペットボトル。

その中に一杯に水を満たして、その水を一滴ずつ、一滴ずつ、俺の額の一点を狙って垂らしていたのだ。

昼間に見ても恐ろしくて堪らないだろうが、これを暗闇の中で見た俺は、本当に肝が潰れるかと思った。

「ふゅっ…フューニャ…!?」

「…」

フューニャは無言で、俺に水を垂らし続けていた。

俺はペットボトルの下から這い出して、濡れた額を拭った。

一体いつから水を垂らされていたのか、顔だけでなく髪までぐっしょりで、廊下にも小さな水溜まりが出来ていた。

死ぬほどびっくりした俺は、荒い息をしながらフューニャを見上げた。

「ふ、フューニャ…?何やってるんだ?」

「…」

フューニャはペットボトルに蓋をして、俺をぎろりと睨んだ。

「…顔の一点に水を垂らし続けると、気が狂うと聞いたもので」

絶対零度のその声に、俺は咄嗟にその場に土下座した。

そうする他に、俺に何が出来たと言うのだろう。
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