The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

sideルヴィア

ーーーーーー…俺が馬鹿だったのだが。昨日…俺はまたしてもやってしまった。

いや、正確には生け贄の件で、もうやめようと思ったのだ。

説教の最中、フューニャが吐き捨てるように言った一言を、俺は忘れてはいなかった。

「私、悪魔くらいは呼び出せますよ?」という、あの一言を。

フューニャの前職は占い師。俺を生け贄にして悪魔を呼び出すくらいのことは、訳ないはずだ。

いや、占い師ってそういうことする人じゃないんじゃないか?という声が聞こえてくるような気はするが。

とにかくフューニャはやる。あの子はそういう子だ。

絶対怒らせない方が良い。そんなことは分かっている。

だから仕事帰りの飲み会ももうやめようと思った。部下が誘ってこようとも、もう行かない。

真っ直ぐ家に帰れば良いじゃないか。そこには可愛いフューニャが待ってるし、俺が酔い潰れなければ彼女も怒ったりはしない。

そうだというのに。

昨日俺は、部下に誘われてしまった。

ルヴィアさん、今日飲んで帰りましょうよ、と。

一応弁解しておくが、俺は一度、断ったのだ。

いや、嫁が待ってるから。もう飲み会はやめておくよ、と。

しかし。

「大丈夫ですよ。酔い潰れなければ良いんでしょう?」とか。

「ちょっとくらい飲んだって、奥さんも怒ったりしませんよ」とか。

「たまには息抜きもしないとストレス溜まりますよ」とか。

俺にとっては悪魔の囁きにも似た台詞を、あれこれ言われ。

結果としては…まぁ…折れてしまったんだな。

ただし。

俺はバーにはついていくけど、ノンアルコールしか飲まないつもりだった。

これならいくら飲んでも、酔い潰れて悪魔召喚の等価交換に使われることはない。

フューニャにも、そう連絡した。

同僚に誘われてバーに行くけど、ノンアルコールしか飲まないから。日付が変わる前には、ちゃんと素面で帰るから、と。

しかし。

やっぱりああいうところに行くと…誘惑に負けてしまうものなんだよな。

既に何杯か飲んでハイになった部下に、ルヴィアさんも一杯くらい飲みましょうよ、とか何とか言われ。

最初は拒んでいたが…。

…一杯くらいなら、良いかな。

なんて、愚かなことを考えたのが全ての過ちだった。

一時間後には、俺はすっかり出来上がってしまった。

あのときの、愚かな自分を殴りたい。
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