The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
エルスキーだけではない。この学校にいる奴らは全員、不愉快な連中ばかりだ。

「おはよルナニア~!今日早いね」

「おはようございます、アシベル」

このクラスの馬鹿の筆頭がやって来た。

アシベル・ウィシナー・カルトヴェリア。

こいつほど、「馬鹿」の二文字が似合う男が存在するだろうか。

それなのにこの馬鹿は、最悪なことにルナニアにとって、エルスキーに次ぐ親しい友人なのである。

アシベルの馬鹿さと来たら、彼の名字を知って仰天したくらいだ。

カルトヴェリアと言えば、あの糞忌々しい帝国騎士団の老害代表、俺に惨めに立場を奪われた雑魚の五番隊隊長、アストラエアの実家ではないか。

あいつは杵で叩きつけても割れないような、かっ…たい頭をしており、融通の効かなさと来たらルティス帝国代表に選ばれるくらいなのに、このアシベルはどうしたものだ。

アストラエアは典型的な老害ではあったけれども、実力は確かだった。

俺でさえ、相手にするにはいささか面倒なくらい。

そうだというのに、このアシベル。

カルトヴェリア家にとっては良い面汚しだろう。

所詮あの家は、アストラエア以外は凡人揃いであるらしい。

剣の腕前はゴミクズ以下、頭の中身はおがくず未満、おまけにそれを恥じることすらない、楽天的でお調子者の性格。

アシベルと話していると、あまりの不愉快さに生爪を剥いでやりたくなる。

俺は自分がふざけるのは好きだが、他人がふざけているのを見るのは大嫌いなのだ。

ふざけないぶん、エルスキーの方がまだましだ。

それでもルナニアである俺は、こんな猿にも劣る無能相手にも、にこやかに接する。

「なぁ、ルナニア。今日の歴史の課題、あれやって来た?」

あぁ、話しかけてくんな面倒臭い。

でも仕方ない。相手をしてやろう。

何せ俺は、今日機嫌がすこぶる良いからな。

「勿論やってないですよ?」

「まっじか!やっべ!お前が頼りだったのに~!」

課題を忘れるのは故意だ。ルナニアはこういうキャラで通しているからな。

「お前ら、何やってんだよ」

それなのにエルスキーは、はぁ、と溜め息混じりに呆れていた。はいはいお疲れ様。

「何やってんだよって言われても、何もやってないんだよ!」

「威張るな。どうすんだ今日の課題。居残りさせられるぞ」

居残り?それは困る。

今日は、愛しのルルシーに会わなければならないのだから。

「エルスキー。一生のお願いです。見せてください」

「またかよ。その台詞、確か先週も聞いたぞ。一生が多いなお前」

先週は数学の課題だったね。

目ぇ瞑ってても解けそうなくらい簡単な問題だったよ。

「じゃあ来世のぶん!来世のぶんの一生のお願い!」

「頼むエルスキー!お前が頼りだ!」

「お前らなぁ…」

と、エルスキーが小言を言おうとした、そのとき。

「なぁに。また課題やってないの?あんた達」

アシベルを越えて、最高に不愉快な女がやって来た。
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