The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
まな板の上の肉となった俺は、必死にフューニャに許しを求めた。

「フューニャ!済まん、俺が悪かった!許してくれ!」

「あら。解体前の豚が何やら騒いでいるようですね」

「フューニャっ…。俺の話を聞いてくれ」

「…」

俺の酔いは完全に覚めていた。今は、いかにしてフューニャに命乞いするかしか頭になかった。

なんとか、生きて明日を迎えなければ。

「あのな、フューニャ。俺が悪っ…」

「…大丈夫ですよ。ルヴィアさん」

「…はい?」

…何が?

この絶体絶命の状況で、安心出来る要素が何処に?

「あなたの同僚に、容赦してやってくれと頼まれたので、命までは奪いません…。…でも、足の一本くらいなくても、私を抱き締めることは出来ますもんね?」

そういう容赦の仕方は良くないと思うんだが。

不味い。フューニャはやる気だ。本気だ。

何とかして止めなくては…!

と、思っていたら。

「でも、足を切るのは可哀想なので、やっぱりやめておきます」

「…え」

やめるの?

いや、やめてくれるのは有り難いけど…。でも、何だろう。まだ不安が。

「…知ってますか。ルヴィアさん」

「…何を?」

フューニャの目と、出刃包丁の刃がぎらっ、と光った。

「…昔、愛する人とずっと一緒にいたいから、という理由で…恋人の局部を切り取った女性がいたそうですよ」

「俺が悪かったぁぁぁぁ!」

俺はその日、人生でこんなに謝ったことがあるだろうかと思うくらい…誠心誠意、フューニャに謝った。
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