The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
ランドエルスへの潜入任務を行うに当たって、ルルシーは始め、酷く俺のことを心配していた。

俺が帝国騎士官学校に、並々ならぬ因縁を持っていることを知っているからである。

更に、精神的に弱り、病んでしまっていた悪夢のような日々のことも、ルルシーは覚えている。

俺はよく覚えていないのだが。

その為ルルシーは、何かあったらすぐに言え、と何度も何度も釘を刺してきたのだ。

けれどもルルシーの心配は、今のところ杞憂に終わっている。

俺は同級生を含め、上級生にいじめられるということはなかった。

クラスでも1、2を争う人気者であるエルスキーと仲が良いということもあり、俺のクラスでのポジションはなかなかに高いものだった。

そもそもこのランドエルスに通う生徒は、良くも悪くも皆能天気だった。

帝国騎士官学校とは違って、校則も拘束も非常に緩い。あの学校は貴族の子女、つまりプライドの塊みたいな人間が集まっていたが、ランドエルスはそうではない。

家の名前を背負って通っている者はごくわずかだし、人の上に立たなければならないというプレッシャーもない。

皆、自分のペースで身の丈に合った帝国騎士を目指している。

それは結構なことで。

そもそも、帝国騎士を目指している者も多くはない。

心に余裕があるランドエルスの生徒達は、馬鹿ではあるが、良い意味で能天気なので、いじめなんて低俗なことをする者はいなかった。

少なくとも、俺の周りでは。

その為、今のところ俺のトラウマを刺激するような事態には遭遇しなかった。

トラウマを彷彿させられる事件が起きたとしても…今の俺が、そんなことで動揺するとは思えないが…。
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