The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
その日、俺は仕事帰りにスーパーと薬局に寄って帰った。

ゼリーやヨーグルト、果物などを買い、更に咳風邪に効くという風邪薬を購入した。

薬が苦手な人でも飲めるようにと、服薬ゼリーが販売されていたので、それも。

これでフューニャも素直に薬を飲むだろう。

買い物の後、俺は急いで帰宅した。

…既に、嫌な予感はしていたのだが。

「…フューニャ!」

「…ルヴィアさん…お帰りなさい」

帰ってみると、フューニャは朝よりずっと顔色が悪くなっていた。

朝は顔が赤かったが、今は青い。

しかも、フューニャの咳。

朝は、けふけふと軽い咳をしていたのに。

今はげふっ、と痰が絡んだような重い咳をしていた。

足取りもおぼつかなくて、見るからにふらふらだった。

そうだというのにフューニャは、いつものようにキッチンに立って、夕食作りの真っ最中だった。

「今日は帰るのが早かったんですね…。夕飯、もう少し待ってくださいね。今作って…」

「馬鹿。夕飯のことなんてどうでも良い」

珍しく、俺はフューニャに苛立ちを露にそう言って、手にしていた菜箸をフューニャから取り上げた。

こんなにふらふらになって、何をしてるんだ。

よく見ると、あんなに大人しくしていろと言ったにも関わらず、いつも通り部屋は掃除されていたし、洗濯物もすっかり片付いていた。

俺の言うこと、全然聞いてない。

こんなことだろうと思っていた。

分かっていたのに、もっときつく言っておかなかった俺の落ち度だ。

「大人しくしてろって言っただろ」

「このくらい…平気です…」

「そんな顔して、何が平気なもんか」

本当に平気な奴は、そんな青い顔はしてない。

「本当に大丈夫です。このくらい…」

「もう良い」

これ以上押し問答していたって、フューニャは納得しないだろう。

だから、実力行使だ。

俺はフューニャをひょいっ、と抱き上げた。

華奢で小柄なフューニャは、あっさりと俺の腕の中に収まってしまった。

「ルヴィアさん…!何を」

「あー、聞こえない聞こえない。お前は寝てなきゃ駄目だ」

フューニャを抱き上げて寝室に連行し、ベッドに入らせる。

首もとまできっちりと毛布をかける。フューニャは不満げにこちらを見上げていたが、きっ、と睨んでやると、ようやく観念したようだった。

「昼に何か食べたか?お粥でも作ろうか」

「…自分で作ります」

「駄目だ。治るまでキッチンには立たせないからな。俺が作るから、お前は大人しくしてるんだ。良いな?」

渋々ながら、フューニャはこくん、と頷いた。

うん。よろしい。

俺は寝室を出て、キッチンに入った。

フューニャが作りかけの俺の夕食は、後で俺が続きを作るとして。

その前に、フューニャに食べさせるお粥を作るとしよう。
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