The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
…ん?

俺は先程のルヴィアの言葉を思い出した。

「…それで?嫁が…何だって?」

「あっ…。えっと、この流れだと物凄く言いにくいんですが…。午後から、早退させてもらえないでしょうか」

「ん?何でだ?」

「嫁が…昨日から体調を崩していて」

あぁ…成程そういうことだったか。

「俺がこんなんじゃ、下の者に示しがつかないのは分かっています。でも…俺がいないと、嫁は平気で動き回るので。他に世話する者もいないし…。あの、ルルシーさんにご迷惑をお掛けして本当に申し訳ないんですが。家で出来るものは全て持ち帰りますので。ですから…」

先程の叱責が効いているらしく、ルヴィアは酷く申し訳なさそうにそう言った。

あぁ…。なんて悪いことをしてしまったんだ、俺は。

「良いよ、帰っても。お前は普段から真面目なんだから、一日二日くらい早退したって誰も何も言わない。仕事の方はこっちで、他の者に割り振っておくから」

「本当に済みません…」

「気にするな。そんな事情があるなら仕方ないよ」

ルヴィアは普段から真面目だし、面倒見も良いから部下からの信頼も厚い。

そのルヴィアが、事情で少し早退するので、ルヴィアのぶんの仕事を負担してくれと言われて…気を悪くする者はいないだろう。

皆快く引き受けるはずだ。

日頃の行いが、こういうときに物を言うんだろうな。

「それじゃ…ルルシーさん、ご迷惑をお掛けしますが、宜しくお願いします」

「あぁ。気にするな。早く帰ってやれ」

「はい…。失礼します。ルレイアさんも」

「はーい。お大事に~」

…ん?

ルヴィア今…誰に挨拶した?

悪寒を感じて横を見る。そこには、にこにことルヴィアに手を振る…。

…ルレイア。

「お前!いつの間に!?」

何の気配もなく!忍びかお前は?

「え~?ルルシーが『間違えて』ルヴィアさんを怒ってるときに一緒に入ってきてましたよ?」

「…」

「あれは『間違い』でしたもんね~。一体誰と間違えたんでしょうね?」

…にやにやしよって。こいつは。

駄目だ。やっぱり…ルレイアを追い返すなんてことは、出来ない。

再度、それを思い知らされた。
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