The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
部下に自宅マンションまで送ってもらい、肩を借りてエントランスまでそろそろと歩いた。

痛み止めは飲んでいるのだが…一歩歩く度に、ずきずきと傷口が痛む。

「大丈夫ですか?ルヴィアさん」

ここまで送ってくれた部下が、心配そうに俺に声をかけてきた。

「あぁ…。平気だ」

「やっぱり本部の医務室に泊まるべきじゃ…」

「平気だ。…お前も悪かったな。ここまで送らせて…」

「いえ…気にしないでください」

そう言いながら、部下はエレベーターのボタンを押した。

「もう良いぞ。あとは一人で帰るから」

「えっ!?そんな…。ご自宅の玄関まで送りますよ」

「お前に肩を借りて帰ってくるのを見たら、嫁がびっくりするだろう。あと少しなんだから、自分で歩くよ」

「でも…。大丈夫なんですか?エレベーターの中で倒れないでくださいよ?」

「心配するな。それじゃ…明日から、しばらく行けないけど…。そっちは頼むな」

「はい…」

俺は心配そうな部下を無理矢理帰し、一人でエレベーターに乗り込んだ。

「…っ…」

歩く度に、傷口が痛む。

強がってはみたものの…支えがないと、やっぱりきついな。

支えがあってもきついのだから、それは当たり前だが。

とにかく、帰宅したらすぐに…「疲れてるから」と言い張って、寝室で休もう。

怪我をしたなんて言えば、大騒ぎするに決まってる。

あくまでも、「ちょっと体調が優れないだけ」ということにしておくのだ。

その為には、大袈裟に痛がる訳にはいかない。

平然と、何事もなかったように帰らなくては。

「…よし」

俺は両手で顔をぱん、と打って気合いを入れた。

痛みを我慢し、ふらふらしそうになるのを堪えて、俺は自宅の鍵を開けた。
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