The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
…一時間ほどたっただろうか。

不意に、寝室の扉が開いた。

「起きてますか?ルヴィアさん」

「ん…。フューニャ…?」

うつらうつらしていたところを、フューニャに起こされた。

「横になったまま食べられるものをと思って、色々作ってみました」

「え…」

「こっちがリゾット、こっちが湯豆腐…。あと、鉄分摂取の為に焼き鳥を。タレと塩の二種類の味付けで」

「…」

「おにぎりもありますよ。さぁ、どれを食べます?全部食べても良いですよ。でもどれも食べなかったらお仕置きです」

「…お仕置きって、何?」

とても怖いんだが?

「寝室を別々にします…。…三ヶ月くらい」

「…脅迫だ…」

そんなの、食べませんなんて言えないじゃないか。

三ヶ月お預けって。それは酷い。無理。

「それが嫌なら食べてください」

「…」

フューニャ…。世話を焼くつもりはないんじゃなかったのか?

夕飯食べてくるって言ってたが…。この様子だと、食べてないんだろう。

あれから一時間しかたっていない。これらを作っていたんなら、フューニャが食事をする時間なんてないはずだ。

…なんとまぁ。可愛いことをする。

出来ればフューニャの献身に応えて、全部食べてあげたいのだが。

風邪ではないから、一応…空腹を感じてはいる、のだ。

でもそれより痛みと貧血が勝ってしまって、あまり食欲がない。

「…じゃあ、リゾットもらおうかな」

せめて、少しだけでも食べよう。

三ヶ月お預けなんて無理だからな。

するとフューニャは、リゾットをスプーンですくい、それを俺の口許まで持ってきた。

「それじゃ…あーん」

「自分で食べるって…」

恥ずかし過ぎるだろ。

「そうはいきません。復讐する絶好の機会ですから。あなたが私にしたこと、そっくりそのままやり返させて頂きます」

「うっ…」

お…覚えていたか。フューニャ。

「あなたは今、袋の鼠。まな板の上の魚ですから。私に従ってもらいます。ほら、諦めてあーんさせなさい」

「…」

自分がやるときは、なんとも思わなかったが。

いざ自分がやられる側になると、こんなに小っ恥ずかしいんだと初めて知った。

フューニャ作のリゾットは、やっぱり美味しかった。
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