The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
その晩。

申し訳ないのだが、今夜はフューニャにはソファで寝てもらうことにして、俺は寝室のダブルベッドで一人で寝た。

そろそろ、折り畳み式のベッドとか買うべきだなぁ…と思った。

普段は一緒に寝てるから良いけど、こういうときは…。

…なんて、寝る直前までは、割と暢気なことを考えていた。

というのも、痛み止めが効いていたから。

しかし、夜中に痛み止めが切れてからが…きつかった。

「…っ…」

僅かに身体を動かすだけで、ずきずきと傷口が痛んだ。

眠気はあるのだが、とてもではないが痛みで眠れそうもない。

シーツをきつく握って、深く息を吐いた。

…くそ。結構きついな。

仕事柄、こういう怪我は初めてではないが…やっぱり、何度経験しても辛いものは辛い。

フューニャがこの場にいなくて良かった。脂汗をかいて、痛みに悶絶している姿なんて見られたら、どんなに心配するか分からない…。

…と、思っていると。

「…大丈夫ですか」

フューニャの、心配そうな声が耳に届いた。

俺は驚いて声がした方を向いた。

そこには、パジャマ姿のフューニャがいた。

「フューニャ…。寝てなかったのか」

「あなたが寝てないのに、私だけ眠れません。傷、痛みますか?」

「…ちょっとな」

本当はちょっとどころではないが、心配をかけたくなくて、俺はそう答えた。

フューニャは俺の嘘に気づいているのかいないのか…。何も言わずに、濡れたタオルで俺の汗を拭ってくれた。

「フューニャ…。構わないで良いから…。寝て良いよ」

俺に付き合って、わざわざ起きていることはない。

しかし。

「嫌です。あなたが寝るまで私は起きています。あなたが寝ても私は起きています」

「…」

「それが気に入らないなら、さっさと治って良くなってください」

…どうやらとことんまで、俺がしたことを全部やり返さないと気が済まないようだな。

とは言うけど…。俺はこういう怪我には多少慣れているから、フューニャの風邪とはまた話が違うだろう…と思うのだが。

言ったところでフューニャが納得するはずがないので、黙っておく。

「…手、握ってあげましょうか」

シーツをきつく握り締めていることに気がついたらしく、フューニャはそう申し出た。

「…俺の手、今…汗ばんでて気持ち悪いよ」

「そうですか。でも私はあなたの手がどうなってても好きです」

フューニャは躊躇いなく、俺の左手をぎゅっと握った。

「あなたが安心して眠れるように、何か歌でも歌いましょうか」

「フューニャ…。何の歌知ってるの?」

「そうですね…。生け贄に捧げた獣への鎮魂歌とか…」

「…そういうのは遠慮して欲しいな…」

余計に具合が悪くなりそうだ。

「冗談です。子守唄で良いですか?箱庭帝国のものですけど」

「…宜しくお願いします」

そういや、フューニャが歌うの聴くのは初めてだな…。

ルルシーさんは…よくルレイアさんとカラオケ行くって言ってたけど…。

仲良いよなぁ、あの二人…。いつ結婚するんだろう。

結婚祝いとか、渡さないといけないな…なんて。

アホなことを考えながら、ぼんやりとフューニャの子守唄を聴き。微睡みの中をさまよい。

いつの間にか、俺は眠りについていた。
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