The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

sideルルシー

ーーーーーーー…一方、その頃。




「…何だ、これは…」

俺の左右を取り囲むように座り、馴れ馴れしく腕を組んですり寄ってくる女達を見下ろして。

俺は嘆くように、天を仰いだ。

ここは『Iron Maiden』。ルレイアが経営する風俗店…要するにキャバクラである。

ルレイアはランドエルス騎士官学校に潜入するにあたり、一人暮らし用のマンションを借りているが。

そこに帰るよりも、この店で女の子達と情熱的に夜を明かすことの方が多いようである。

その為、俺はルレイアに伝言を伝える為にここに来たのだが。

来た瞬間に、俺は客と同じような待遇を受けた。

いやいや、俺は客じゃなくてルレイアに会いに来ただけだから、と何度言っても聞きやしない。

お待ちしておりましたと超VIP待遇を受け、こうして左右に美女が二人はべっている始末。

しかもこの美女達のプロポーションの良いこと。豊かな胸を惜しげもなく俺の腕に押し当ててきて、そのむにゅっとした感触に寒気がする。

俺だって一応男だから、女性達にこんな風にされたら、嫌な気はしない。

さすがにやり過ぎではないかと思うが、これはルレイアの「教育」の賜物なのだろう。

それはともかく、俺は内心死ぬほどびびっている。

『青薔薇連合会』には、こんな噂がある。

「ルルシー幹部に近寄ろうとした女は、その全てが、ある日いきなり行方不明になる」と。

そして行方不明になった女の姿を再び見た者は、一人もいない。

噂では、そういう女は闇に葬り去られたということになっているが。

俺はこれを聞いて寒気を覚え、ルレイアに問い質したことがある。

女性達を闇に葬ったのはお前かと。

それを尋ねた途端、ルレイアの目が一瞬だけ、闇に染まったのを俺は見逃さなかった。

次の瞬間には、ルレイアは「…何のことですか?知りませんよ?」なんてすっとぼけたが。

多数の行方不明者を出している犯人が誰なのか、これではっきりした。

つまり何が言いたいのかというと。

…俺の周りに女性がいると、ルレイアが荒ぶりそうで怖い。

アリューシャがいつだったか、「ルル公いつか、ルレ公に拉致監禁されるんじゃね?」と何気なく恐ろしいことを口にしていたのを思い出す。

何が怖いって、本当にやりかねないのだ。あいつは。

この女性達は仕事でこうしているだけなのだろうけど、もし彼女達が本気になったらと思うと、恐ろしくて震えが走る。

俺に縁談が来たときのルレイアが、どれほど恐ろしいことになったか。

二度とあんな目には遭いたくない。

あのときの話をすると、未だにアリューシャは泣いてアイズの部屋に逃げるくらいだからな。

アリューシャの傷は深い。

それはともかく。

「…早く帰ってきてくれ…」

この女性達がもしその気になったらと思うと。

この世に災厄が訪れる前に、早く帰ってきてくれ。ルレイア。
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