The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「…ルヴィア?」

「はい…?」

「…生きてるのか?」

「えっ?生きてますけど…」

「随分元気に走馬灯見てますね」

「…??」

振り向くと、そこにいたはずのルヴィアの嫁が何処かに去っていた。

…これが、死にかけのルヴィア?

「…ルヴィア、本当に生きてるんだよな?幽霊じゃないよな?」

「ルルシーさん…?何言ってるんですか?さっきから…。俺、死んでませんよ?」

「だよな…」

死んでないし、しかも元気そう。

普通に喋ってるし…。死にかけの人間が、こんな風に喋れるはずがない。

「さっき、お前の嫁が…。『ルヴィアは死にかけで、棺桶に片足突っ込んで走馬灯を見ているところだ』って…」

「えっ…!?」

ルヴィアの目が点になっている。何の話?とでも言いたそうだ。

「別に…死にかけてませんよ?むしろ元気ですし…」

「だよな…。普通に元気そうなんだが…」

すると、後ろからルヴィアの嫁が、不満げな顔をして、お盆に紅茶のティーカップと茶菓子を持ってやって来た。

「だって…。元気だと言ったら、今すぐにでも仕事に出てこいって、ルヴィアさんを連れていってしまうかもしれないと思ったものですから」

「あ…そういうことか…」

もうすっかり元気ですよ、なんて言ったら…。ルヴィアを連れていかれるかもしれないと思って。

それで、わざと具合が悪いということにしておいたのか。

「心配しなくて良い。ちゃんと治るまでは、本人が何と言っても出てこさせないから」

「そうですか。それなら良かったです…。…お紅茶、どうぞ」

「ありがとう。すぐに帰るから、構わないでくれ」

なんとも健気で、献身的で。良い嫁じゃないか。

「それじゃ、私は失礼します」

「あぁ」

ルヴィアの嫁は、ぺこりと頭を下げて寝室を出ていった。

「良いお嫁さんですね。顔も可愛いですし…。紅茶の淹れ方も上手い」

紅茶を啜りながら、ルレイアが言った。

「人妻だぞ。手を出すなよ」

「出しませんよ~。俺は絶対に外せない首輪をつけられた女に手を出すなんて、無駄なことはしない主義なんです。あの様子じゃ彼女、ルヴィアさん以外には見向きもしませんよ」

「確かに…」

まぁ、彼女をたらし込んだところで、ルレイアに得もないしな。

「それで、ルヴィア。具合はどうだ?」

「もう随分良くなりましたよ」

「そうか…。それは良かった。有給を延長した方が良いかと思ったんだが…」

「大丈夫です。来週からは復帰します」

持ち前の真面目さから来る、強がり…という訳ではなさそうだな。

顔色も良いし、痛みを我慢している様子もない。

まぁ、あの嫁がついてるんだもんな…。看病は完璧に近いだろう。

唯一心配事があるとしたら…。

「あんまり動き回って、嫁を心配させてやるなよ」

「あはは…。それについては大丈夫です。今度勝手に動こうとしたら、俺の写真をマフィア内にばらまくって息巻いてますから…」

「…そうか…」

遠い目のルヴィア。既に脅しはかけられていたようだ。

さすがはルヴィアの嫁。抜かりない。
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