The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「ルルシー!俺の嫁!チョコください!」

「…は?」

満面の笑みで俺の執務室に突撃してきたルレイアに、俺はぽかんとして見つめ返した。

…頭、おかしくなった?ルレイア。

いや、元々あまりまともではないけど…。

実は俺はそのとき、今日が何の日か忘れていたのである。

「チョコください、ルルシー」

「何で…?」

飯をたかりに来るのはいつものことだが…チョコください、とはどういうことなのか。

いや、それよりも。

「お前、何なんだそのフェロモンは…!?」

今日のルレイアフェロモンは、いつもより凶悪さを増していた。

一体どんな調合をしたらそんな香りになるのか知らないが、今日のルレイアの香水は、酷く官能的で、頭がくらくらしそうだった。

ルレイアの為の香水、と言っても過言ではない。

ルレイアだから、こんな香水をつけられるのだ。他の者がつけたら、ただ下品なだけだ。

「うふふ。今日は大事な日でしょう?だから頑張ってみました」

「は…!?何の日なんだ…?」

「もー、ルルシーったら~」

い・け・ず、と指でツンツンしてくるルレイア。やめろや。

すると。

「ルル公~っ!チョコくれー!」

「チョコ持ってきたよ、ルルシー」

「私も…!」

アリューシャ、アイズレンシア、シュノの三人が揃ってやって来た。

あぁ…また全員勢揃い。

そして三人も、チョコがどうとか言ってる。

チョコって…。今日一体なん…、

「…あ、そうか…。今日バレンタインなのか…」

「今気づいたのかよ、ったくルル公は…。何考えてんだか」

やれやれ、と呆れるアリューシャ。

そんなことばっか考えてるお前らに言われたくない。殴るぞ。

しかし、今日はバレンタインだったのか…。そういやそんな時期だったな。

ルレイアがフェロモンぷんぷんさせてる訳だ。

「ルレ公、ちなみに今日もらったチョコの数は?数十個?」

「ふふ、甘いですね…。桁が一つ違いますよ」

「マジ!?じゃあ数千個か!悪魔だなお前!」

「数百個だろ…」

十の位の次は百だろ。

あぁ、頭痛い。アリューシャは放っとけ。馬鹿だから。

それにしてもルレイア、三桁にも及ぶチョコ…。一体どうするんだ。

「食べきれないので鳩にでもやろうかと思います」

「やるなよ…」

うふふ、と官能的に頬笑むルレイア。ったく…つくづく女の敵だ。

「ルル公、チョコくれ。さっきアイ公とシュー公からもらったけど、ルル公もくれ」

「知らねーよ…」

何でお前はもらう専なんだよ。

「はい、ルレイア、ルルシーも。既製品だけどね」

アイズレンシアが、俺とルレイアそれぞれにチョコレートを渡してきた。

「わーい。ありがとうございます」

「アイズは何でバレンタインに乗っかってんだ…?」

「日頃の感謝を込めてね」

成程。良い奴だなアイズは。

アリューシャとルレイア、お前らも見習えよ。

俺も見習わないとな。

更に。

「はい、ルルシー。私からも」

シュノが、可愛い紙袋に入ったチョコレートをくれた。

「一応、私の手作りなの」

「ありがとう、シュノ」

少し前なら、シュノの手作りというだけで戦慄したものだが。

今では、安心して食べられるようになってきた。

だから、素直に嬉しい。

そして、

「こ、これはルレイアにっ…」

シュノは、俺にくれた紙袋の、倍ほどの大きさの紙袋をルレイアに渡した。

本命チョコ、って奴だな。

「ありがとうございます、シュノさん」

「どういたしましてっ…」

男の俺でもくらっ、とするような魅惑的な笑顔で受け取るルレイア。

成程、皆…この笑顔にやられるんだな。

アリューシャの言う通り…悪魔だな。この男は。
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