The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「…つーか、ルル公だけチョコくれないとか酷くね?」

アイズにもらったチョコを早速食べながら、アリューシャが言った。

は?

「確かに。酷いですよね」

「いや…アリューシャも渡してないだろ」

もらうだけだろ、アリューシャも。

しかし。

「アリューシャは良いんだよ。バレンタインを覚えてたんだから。ルル公はバレンタインだってことすら忘れてたんだろ」

「そりゃ、忘れてたけど…。ってそれどういう理屈だよ?」

バレンタインを覚えてたらチョコを渡さなくても良いのか?何それ?

「これはあれだな…。ルル公には飯作ってもらわなきゃな!それがチョコの代わりな」

「なんっ…だ、そりゃ…」

どういう理屈なの?それ。ねぇ。

どう考えてもおかしくない?

理不尽過ぎると抗議してやろうとしたら、ルレイアがとんでもないことを言い始めた。

「ルルシー。俺へのお返しは身体で良いですよ?」

「よし。今晩何食べたい?何でも好きなもの作ってやるぞ」

ルレイアに貞操を脅かされるよりは、こいつらに飯作ってやった方が遥かにましである。

「やったー!ルル公、アリューシャあれな。あれ食べてみたい!ベシソーワズって奴!」

何だそれ?

アリューシャ、リクエストするのは良いが、正式名称でリクエストしてくれ。何を求めてるのか分からん。

しかしこんなとき、頼れるアイズがいた。

「あぁ、ビシソワーズのことだね?」

「そう!それそれ」

アイズ…。お前はアリューシャの専属通訳だな。

ビシソワーズね。はいはい。

「ルレイアは?何が良いんだ」

「ルルシーの熱~いキスを…」

「あぁ、キッシュな。はいはい」

「ちょっと~!ルルシーのいけず~」

でもそんなところが好き~と、くっついてくるルレイア。離れろ。

そうしていると、不意にアイズの携帯からメールの受信音が鳴った。

「…あ、皆」

「何だ?」

「アシュトーリアさんから。『皆、チョコレートあげるから来て~♪』だって」

アシュトーリアさん…。あなたまでバレンタインに乗っかって…。

「マジ!?行く行く!チョコくれ~」

「いやぁバレンタインって、本当素敵なイベントですね~」

「私、アシュトーリアさんにもチョコあげなくちゃ」

「アシュトーリアさん、きっと喜ぶね。私からもあげよう」

「…」

良いのか。泣く子も黙る『青薔薇連合会』の幹部達がこんなんで。

…まぁ、殺伐としているよりは良いか。

なんて思うのだから、俺も随分ほだされたものだ。

「ほらほら、行きましょうルルシー」

「…あぁ、ルレイア」

五人で連れだって、バレンタインチョコをもらいにマフィアの首領に会いに行く。


『青薔薇連合会』は、今日も平和で…何よりである。
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