The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
…あぁ、もう良い。頭痛くなってきた。

「…分かったよ。そんなに言うなら、食えよ」

「良かったら一緒に食べないか?」

「一緒には食べないが、食べるところは見届けてやる。骨を拾ってやらなきゃならんからな」

そんな海のものとも山のものとも知れないチョコレートを、食べるつもりはない。

しかし、オルタンスの最期くらいは見届けてやる。

「リーヴァ、お前も証人だ。一緒に来い」

「…気が進まないな…」

文句を言うな。俺だって嫌々なんだから。

俺達は三人で連れ立って、オルタンスの執務室に移動した。

何が嬉しくて、男三人で仲良くチョコレート囲まなきゃならんのだ。

オルタンスが珍しくご機嫌なのが、ただただ気持ち悪くて仕方ない。

喜ぶんなら顔も一緒に喜べよ。態度は喜んでるのに顔だけはいつもの仏頂面だから、そのギャップが気持ち悪い。

「ほら、さっさと食って終わらせろ」

「あぁ」

アダルトグッズ専門店の袋を開ける。

すると中には、可愛らしいラッピング袋に包まれた、手作りのものらしい一口チョコがいくつも入っていた。

怪しいことこの上ないのに、オルタンスだけは何故か楽しそう。

「…やっぱり、やめておいた方が…」

はらはらしながら、リーヴァが再度止めた。

しかし、オルタンスは。

「…手作りチョコをもらうのは初めてだ」

何、ちょっと感動してんの?

お前は男の手作りチョコをもらって嬉しいのか。

「…オルタンス殿が、そんなにチョコレート好きとは思わなかった」

「別にチョコレートが好きな訳ではない。人間に手作りチョコをもらうのが初めてなんだ」

初めての手作りチョコが敵組織のマフィア幹部で、しかも「ルティス帝国の歩くエロス」と呼ばれる男からのプレゼントなんて。

お前、前世で何したの?

それとも、今世で悪事を働き過ぎた結果なのか。

「…どうなっても知らんぞ」

「あぁ。どうなっても本望だ」

そうかい。

オルタンスは何の躊躇いもなく包みを開け、小さなカップに入った一口チョコを口に放り込んだ。
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