The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「!!!」

「うげっ…何だこれ!?」

リーヴァは声にならない悲鳴を出して悶絶し、俺は吐き出しそうになるのを必死に堪えながら、オルタンスに怒鳴り散らした。

「お前、何食わしたんだ!?」

「俺が食わせたんじゃなくて、ルレイアが作ったんだが…」

「何が入ってんだ!?」

「さぁ…」

呑気なオルタンスをぶっ飛ばしそうになるのを必死に抑える。

リーヴァが、青い顔をして喘ぎながら、オルタンスに懇願した。

「…す、済まない。オルタンス殿…。み、水を…」

「あぁ…。ちょっと待ってくれ」

オルタンスは平然として立ち上がり、俺とリーヴァに水の入ったグラスを持ってきた。

それを奪い取って喉に流し込むが、口の中を針のように刺す痛みが消えない。

「何入れやがったんだ、あいつは…」

口に入れてチョコを噛んだ瞬間、チョコの甘みを瞬殺する勢いで、どろりとした激辛ソースが口の中を汚染した。

死ぬほど辛い、なんてレベルじゃない。

これで俺の舌、機能を停止した恐れがある。

ほら見たことか。絶対何か仕込んでると思った。

いや、ちょっと待て。

「オルタンスお前…。このチョコを平然と食ってたのか…!?」

「うん…?」

「辛くなかったのかよ!?」

「あぁ…。まぁ、ちょっとピリッとしたな…」

「…」

「…そういうチョコレートなんだと思っていた」

…この男、頭だけでなく、舌までイカれてやがる。

ルレイアのイカれ具合と良い勝負だ。

さすが帝国騎士団長とでも言うのか。

「俺は満足だがな…」

「…俺とリーヴァは明日、有給を申請する。病欠だ」

「そうか」

毒物や惚れ薬でなかったのは幸いだが。

何だろう…。ルレイアと言うより、平然としてチョコを食べてるオルタンスに腹が立つ。

全く、ろくでもないバレンタインだ。
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