The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「フューニャ…ただいま」

「お帰りなさい、ルヴィアさん」

帰宅すると、いつも通りフューニャがてこてこ寄ってきて、出迎えてくれた。可愛い。

そして早速、いつもの浮気チェック。

ふんふん、と俺の周囲をぐるりと一周回って、匂いを確かめていた。

…しかし、この儀式…いつまで続けるんだろうなぁ。

そんなに心配しなくても、俺はフューニャにぞっこんなのだが?

まぁ、俺は浮気なんて趣味はないし…。フューニャ以外の女性にも興味はない。

だから、この浮気チェックに引っ掛かることもないはず。

と、呑気に構えていた。

しかし。

フューニャの、警察犬並みに優秀な鼻が、何かを検知した。

「!これは何の匂いです?」

「えっ…何?」

俺は思わずドキッ、とした。

フューニャが感知するのは主に、煙草の臭いや、女物の香水の匂いだ。

しかし俺は煙草はすっぱりとやめているし、フューニャ以外の女性といちゃついたこともない。

従って、それらの匂いが身体についていることは有り得ない…はず。

「な、な、何もしてないぞ、俺は。俺はフューニャ一筋だ!生涯フューニャ以外の女を隣に置くつもりはない!」

「…これです」

「は?」

フューニャは俺の持っていた鞄を引ったくり、その中から、いくつかの包みを引っ張り出した。

今日同僚にもらった、義理チョコである。

…え?あれの匂いを嗅ぎ分けたの?さすがフューニャ…。

って、感心してる場合ではない。

「…最初に言っておくが、フューニャ…。それは義理チョコだぞ?」

「…」

フューニャは疑わしげにじろっ…と俺を睨んだ。

…こんなことなら、義理チョコお断りすれば良かった。

「…とりあえず、これは私が没収します。あなたには相応しくありませんから」

「あ、はい…」

チョコと言っても、中身は市販の袋詰めアソートチョコだから、別に惜しくも何ともないが。

「…ちなみに、フューニャさん…。俺に、本命チョコのご用意は…?」

自分から聞くのも厚かましいが、たった今全チョコを没収された身としては…どうしても気になる。

「残念でしたね。今日がバレンタインだと思い出したのはつい今さっき、このチョコを見つけたときです。そもそもバレンタインの存在を知ったのもごく最近ですので」

「あっ…そうなんだ」

そうだ。失念していた。

フューニャは元々、箱庭帝国の出身。

あの国に…バレンタインなんてイベントがあるはずがない。

…そっか。チョコないんだ…。

期待していたぶん、やっぱりちょっと寂しかった。

…まぁ、良いや。来年は、俺の方からも買ってこよう。

義理チョコを没収され、ただいまのキスもなく、フューニャはさっさとダイニングの方に歩いていってしまった。

あぁ…やっぱりちょっと切ない。

俺は小走りで、フューニャを追いかけた。

そしてダイニングに入って、そこに広がっていた光景に、思わず目が点になった。
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