The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
そして、翌日。



「よー、ルナニア。歯医者どうだった?」

ランドエルス騎士官学校に行くと、エルスキーとアシベルが迎えてくれた。

こいつらのへらへらしてる醜い顔を見ると、吐き気がするな。

ルルシーの高潔さに比べたら、こいつらはドブネズミみたいなもんだ。

しかし、歯医者って何の話だ?

一瞬考えて、そして思い出した。

そういえば俺、昨日歯医者に行ってることになってたんだっけ。

とりあえず、ルナニアらしくアホを演じておくか。

「めちゃくちゃ怖かったですよ~!口の中きゅいんきゅいんって!」

あ、でも初診じゃきゅいんきゅいんはやられないか、と思ったのだが。

二人共馬鹿なので、あっさりと信じてくれた。

「しかもまだ何回も行かなきゃならないんですよ…」

しめしめ。こう言っておけば遊びの誘いを断ったり、休みを取る口実になる。

我ながら狡猾なことを考える。歯医者なんて口から出任せだったが、意外と使えるな。

「歯医者ってのはそんなもんだ。頑張れルナニア」

「ドンマイ!今度クレープか何か奢るよ」

「歯を治療中なのに、食べ物のご褒美は駄目だろ」

「あ、そっか」

ぺろっ、と舌を出すアシベル。

こいつらも馬鹿だから、簡単に信じてくれる。

全く。ランドエルス騎士官学校の学生は扱いやすくて良い。

顔では純粋な笑顔を見せながら、俺は腹の中で彼らを嘲笑っていた。
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