The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
…翌日。

俺はルナニアの皮を剥ぎ取って、全身黒の衣装に身を包んだ。

アクセサリーを身に付け、オリエンタルな香水を吹き付ける。

するとあら不思議。あっという間にマフィアの幹部に大変身。

うんうん。やっぱりこうでないと。

「おはようございます、皆さん」

「おぉ~。ルレ公おひさ!」

迎えに来てくれたルルシー達の車に乗り込むと、まずアリューシャが迎えてくれた。

「久し振りだね、ルレイア。調子はどう?」

「上々ってところですかね」

アイズに会うのも久し振りだ。

更に。

「ごめんなさいね、ルレイア。わざわざ呼び立ててしまって」

アシュトーリアさんは申し訳なさそうに謝った。

この物腰柔らかな女性がルティス帝国最大のマフィア、『青薔薇連合会』の首領だと誰が思うことだろう。

「いえいえ。帝国騎士団のところに殴り込むのは、俺にとってはピクニックみたいなもんですから」

「物騒なピクニックだな…」

ぽつりと呟くルルシー。

物騒って。マフィアなんだからそのくらいスケールが大きくないと。

そのとき、車の中にシュノさんの姿がないことに気がついた。

「今日は、シュノさんはお留守番ですか?」

「そうなの。本当は皆で来たかったんだけど、幹部クラスが全員留守にする訳にもいかないし」

「ですよねぇ」

ルルシーは俺の相棒だから一緒に来ないなんて有り得ないし。

アイズはアシュトーリアさんの右腕だから、それまた一緒に来ないなんて有り得ない。

アリューシャは頭がちょっとアレなので、一人で残しておくには色々問題があるし。

仕方なく、シュノさんがお留守番、と。

「久し振りにシュノさんにも会いたかったです」

「そうね。シュノもあなたに会いたがってたわ」

一人で本部に残り、しょぼんと待っているシュノさんの姿が目に浮かぶ。可哀想に。

ランドエルスのミューリアを始めとした女子生徒は、皆猿みたいなもんだし。

久し振りに人間の若くて可愛い女の子を見て、目の保養にしたかったのだが…仕方ない。

ルルシーを見て、目の保養にするとしよう。

俺は隣に座っているルルシーを凝視した。

あぁ、相変わらず素敵。

「…じーっ…」

「…何ガン見してんだ」

「ルルシー療法で俺の目の英気を養ってます」

「…アイズ。ちょっと場所変わってくれ」

「ルルシ~!」

そりゃないですよ、と彼の腕にしがみつく。

しかしルルシーは鬱陶しそうに、しっしっ、と手で払ってきた。

やっぱりルルシーはいけず。でも…そんなところが好き。

なんて楽しい。ランドエルス騎士官学校でルナニアとして過ごしているより、俺は余程生き生きしていた。
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