The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「その通りです、ルルシー。だから俺は、別の提案をさせて頂こうかと」

「…聞こう」

俺は尊大に足を組み、挑戦的にオルタンスに挑んだ。

「帝国騎士団が『連合会』に協力しろ。それなら話を聞いてやる」

隣にいるルルシーが、息を呑むのが分かった。

オルタンスだけが、相変わらず平然としていた。

「…そう来たか」

「そう来ます。あなた方に首輪をつけられちゃたまったもんじゃありませんからね」

利用出来るものがあるのなら、利用した方が良い。

こいつらがいくら血を流そうと、俺達の懐は全く痛まないのだから。

精々、便利な盾になってもらおうじゃないか。

「元々お互い敵同士。背中を預けて仲良く共闘なんて出来るとは思っていませんね?」

「全くその通りだ。我々としても、マフィアと手を取り合うつもりはない。あくまで利害関係が一致しているというだけだ」

よくお分かりのようで。

「それで、どうします?俺達に協力しますか?当然、資金援助やその他権限の委託は請求しますよ」

「イエスだ。『連合会』と停戦・共闘出来るなら何でも良い」

「オルタンス殿!」

帝国騎士団が『青薔薇連合会』の番犬にでも成り下がるかのような条件に、耐えきれないとばかりに抗議の声を発したのは、五番隊のアストラエアであった。

アシベルの優秀な伯父様だ。

不出来な甥っ子と違って、アストラエアは俺のことを親の仇のように嫌っている。

そんな俺の言いなりになるのが、どうにも我慢ならないらしい。

「こんな…このような条件を飲むなど」

「言いたいことは分かるが、我々は『青薔薇連合会』の助けを借りなければ『シュレディンガーの猫』を排除することは出来ない」

「しかし、それは『連合会』とて同じはず!」

「いざとなれば『連合会』はルティス帝国から逃げることも出来る。だが、我々は逃げることは出来ない。頭を下げてでも、彼らには協力してもらわなければならない」

オルタンスは淡々とアストラエアに語った。

抑揚のない声は、まるでロボットのようだった。

「それに何より、忘れたか?我々は『青薔薇連合会』に借りがある。もとより逆らえる立場ではない」

「っ…」

言葉に詰まるアストラエア。

なんて素晴らしい。最高に面白い漫才を見ている気分だ。

こんなものを見せられたら、自然と笑いも出てくるというものだ。





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