The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「…」

「…」

部屋の空気は凍りついていた。ルルシーもアイズもひきつったような顔をしているし、アリューシャの口は半開きのまま、時が止まっていた。

帝国騎士団側も、青ざめたような顔をしていた。

オルタンスは何の悪意もなく、ぽやんとしていた。

ちなみにアシュトーリアさんだけが、あら~、とにこにこしていた。さすがである。

「…」

「…」

しばし無言で見つめあった後。

「…死にたいんですか?」

人生史上最低を記録する、冷たい声だった。

声だけで人を殺せるなら、オルタンスは今頃息をしていなかったことだろう。

「いや、死にたくはないな…」

これほどまでの殺意を向けられても、この涼しい顔。

「なら黙ってろよ」

「分かった」

もうこの話はおしまい、とばかりにオルタンスは手元の資料をぺらぺら捲った。

…とりあえず、決闘は始まらずに済んだ。

「…お前、余計なこと言うんじゃねぇよ…」

三番隊隊長、アドルファスがオルタンスに向けて言った一言である。

死にたくないのなら、喧嘩を売る相手は選ぶことだ。




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