The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
次オルタンスが俺の地雷を踏み抜いたら、問答無用で撃ち殺すつもりだったのだが。

余計なことを言うなと釘を刺されたオルタンスは、その後は大人しかった。

と言うか、その後喋っていたのは俺じゃなくて、アイズだった。

こうなると俺は暇をもて余すのみ。

仕方ないので、隣のルルシーやアリューシャにネイルを見せびらかしたり、スマホをポチって遊んだりしていた。

見たところによると、オルタンスやアドルファス辺りは淡々としているけど。

アストラエアやユリギウス、それから哀れな俺の後釜であるルーシッドは、明らかに不機嫌そうだった。

奴らからしてみれば、マフィアと組んでマフィアを倒すなんて信じられないのだろう。

そもそも今回の共闘要請だって、帝国騎士団内では相当揉めたことが容易に予想出来た。

少なくともこの三名は、間違いなく反対していただろうからな。

まぁ、帝国騎士団では多数決の原理で意思決定しているから、こいつら三人が反対したところで、他の七人が賛成すれば従わざるを得ないのだが。

オルタンスが何と言って彼らを説き伏せたのか、大体予想はつくが…。実に愉快だな。

そもそも、あの帝国騎士団が俺達の顔色を伺いながら「お願い」してくる事実が既に、愉快でたまらない。

さて、話を戻すとして。

聞くところによると帝国騎士団は、まだ『シュレディンガーの猫』の尻尾を掴んではいないようだった。

それはこちらも同じだ。

違うのは、行動を起こしているか、起こしていないかという点。

『青薔薇連合会』は既に、『シュレディンガーの猫』のメンバーを探る為に、俺がランドエルスに潜入しているが。

帝国騎士団はまだ特に動いてはいない。

これは帝国騎士団が怠惰であると言うより、危機感の違いだ。

『青薔薇連合会』は同じマフィアとして、『シュレディンガーの猫』を早くから警戒していた。

こればかりは表社会の組織と、裏社会の組織との違いだ。

とはいえ帝国騎士団より優位に立てるなら万々歳。さっさとランドエルスに紛れ込んでいる『シュレディンガーの猫』のスパイを見つけ出し、その情報を帝国騎士団に売り付けたいところだ。

うかうかしていられないな。

ランドエルスに戻ったら、早速対策を立てなくては。

俺はへらへらしている振りをしながら、腹の中では冷静にそんなことを考えていた。
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