The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
その時点で覚悟を決めた俺だが、一つ大きなハードルを越えなければ、これは実行出来なかった。

ルルシーという、大きなハードルである。

彼を説得しないで勝手なことを始めてしまうと、ルルシーは「絶交する」という恐ろしい脅し文句を吐くに決まっていた。

だから俺は計画を実行に移す前に、ルルシーに相談することにした。








「…駄目だ」

俺が話を持ちかけるなり、ルルシーはばっさりとそう切り捨てた。

…そりゃ、二つ返事で良いよ、と言われるとは思ってなかったけどさ。

いきなり駄目だ、なんて酷くない?

「そこを何とか」

「駄目だ。何を言い出すかと思えばお前は」

「えぇ~」

「えぇ~じゃない」

ルルシーは一歩も引かない、という態度を崩さなかった。

こんなに頑なに拒むとは。

大体、俺は電話で済ませるつもりだったのだ。

電話して、「こんにちは~ルルシー。ところで相談があるんですけど」と言っただけなのに、ルルシーは「今すぐ行くから待ってろ」と低い声で言った。

で、来てくれたのは良いのだが。

「こんなことだろうと思った。またお前は、平気で危険なことに首を突っ込もうとして」

どうやらルルシーは、俺が何やらまた危険なことを企んでいると見抜いて、それを止めに来たようだ。

さすがルルシー。俺のことよく分かってる。

これも愛の為せる業だな。

「ルルシーは俺のスキルを軽視してるんですか?大丈夫ですよ。相手は女なんだから」

「一般人ならな。でも、相手がマフィアなら話は別だ」

「えぇ~…」

「お前こそ敵を軽視し過ぎだ。相手は『シュレディンガーの猫』なんだぞ。狡猾で残忍な裏社会のマフィアだ。一筋縄ではいかないことくらい分かってるだろ」

「そりゃ分かってますけど…」

今までの女とは訳が違う。俺が色気を振り撒いても、騙されてくれる保証はない。

むしろ、それを利用してくる可能性さえあるのだ。

騙しているつもりが、実は騙されている。よくある話だ。

「ややこしいことになるだけだ。『シュレディンガーの猫』の構成員を見つけたのなら、捕らえて拠点を吐かせる。そして帝国騎士団と協力して襲撃する。それが一番だ」

「…」

ルルシーの言うことは正しい。

正しいのだけど…。

「…それをして、何人犠牲者が出ることでしょうね」

「…」

戦いに勝つだけなら、ルルシーの言う正攻法が一番。

でも、その方法は…恐らく、もっとも犠牲者を多く出すことだろう。
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