The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「そもそも、あの女、黙って捕まってはくれませんよ。第一…捕まってくれるかも分からない」

「…」

「恐らく訓練されてる。自分が捕らえられると思ったら…自決するんじゃないですか。そしたらまた一から振り出し。おまけにその一件で、奴らは更に警戒を強くして、尻尾を隠すでしょう」

ルルシーも、それは分かっているはずだ。

訓練されたマフィアの構成員であれば、間違いなくそうする。

俺達がそうするように、きっと彼女もそうする。

「…だからって、またお前が無理をするのか」

「俺が一番の適役だと思いません?」

「そうだな。そうだけど…。俺は嫌だよ」

嫌、と来たか。

ルルシーったら。理屈で攻めても俺に勝てないからと、情に訴えるつもりか。

成程。確かにそれが、俺には一番よく効く。

「お前一人が無理をして、無茶をして、また死の危険に晒される。もう二度と嫌だ」

「そんなこと言われたら、俺も躊躇っちゃうじゃないですか」

「躊躇え。はっきり言うがな、俺は『青薔薇連合会』の存続より、お前一人が生きていてくれることの方が大事なんだ」

わぁ。なんて熱烈な愛の告白。

「だから無理をして欲しくない。犠牲者がいくら出ても…お前じゃないなら別に良い」

「ありがとうルルシー。俺もあなたのことが大好きですよ」

俺も全くその通り。ルルシーがいるならそれで良い。ルルシーがいないならこの世には何の価値もない。

それだけだ。

「お前、そんなにな…。俺と結婚するだのハネムーンに行くだの言うなら、一人で危ないところに行こうとするな。一人じゃ結婚も出来ないんだぞ」

「確かに。さすがルルシー。俺の説得が上手いですね。うっかり全部諦めて、あなたの腕の中に飛び込んでしまいそうですよ」

「ならいっそそうしてくれ。その方がましだ」

あぁ、もう本当にそうしてしまおうか。

それでも良い気がする。どっちにしても俺にとってはハッピーエンドだ。

「…なんて言っても、お前は行くんだろ?」

「…」

そう。その通り。

だからこそ、俺はルルシーに相談を持ちかけたのだ。
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