The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
一つ目は、入学が容易である、ということ。

やべぇ頭が悪くて入る高校がねぇ。仕方ない。騎士官学校にでも入るか、みたいな動機で入学する生徒も当たり前にいる。

帝国騎士に必要な要素は、基本的には頭の中身より、体力とか筋力。

要するに、頭はちょっと良くなくても、腕っぷしが強ければ帝国騎士団では歓迎されるのである。

その為騎士官学校は、成績が思わしくない受験生の最後の砦だったりするのだ。

勿論、帝国騎士官学校みたいな有名な学校は例外だ。腕っぷしだけでなく、頭も相当良くなければ入学は出来ない。

そもそも、頭が必要ないのは末端の帝国騎士だけで、上で指揮をする役職付きの帝国騎士は、それなりに頭の良さも求められる。

でも、そこまで上の役職に就きたい訳じゃないから良いや、という主義の者は、結構あっさりと騎士官学校に入学したりする。

とりあえず騎士官学校に入っちゃえば、就職も容易だし、まぁ食いっぱぐれることはないかな、という風に。

さて、二つ目の理由。これは、学費が安いからである。

非常に現実的な理由である。

騎士官学校は、国を守る未来の帝国騎士を育てる学校ということで、特別に国から補助金が出ている。

その為、普通の高校と比べると、学費がかなり安い。

私立の騎士官学校も、例外ではない。

私立でも、普通科の公立とほとんど変わらないくらいの学費しかかからないので、家が貧しい者は、騎士官学校に進学することが多い。

それに、ランドエルスにはないが、騎士官学校は寮制であることが多いので、「うちは家が貧乏だから、全寮制の騎士官学校に行くよ」という者はかなりいる。

おまけに卒業後の進路も安定しているから、親としても安心して送り出せる訳だ。

三つ目の理由だが、これが最たるものだと思う。

人生のキャリアにおいて、「騎士官学校を卒業した」という実績は、とても優位に働くことが多いのである。

騎士官学校では、人として守るべき倫理、国に尽くす忠義など、道徳的な教育に力を入れている。

更に、騎士官学校は割と校則がきつい学校であるから(ランドエルスは例外かもしれないが)、騎士官学校を出たと聞けば、成程ストレス耐性もあるし、体力的にも充分優れていると判断される。

騎士官学校を卒業したというのは、それだけである種のステータスになるのだ。

それは勿論、卒業後の進路にも影響する。

例え帝国騎士にならなかったとしても、履歴書に騎士官学校卒と書いてあれば、それだけで充分なアピールポイントになる。

そんな理由があるから、「帝国騎士になるつもりはないけど、騎士官学校出ておこう。どうせならきつい学校より緩い方が良いよね」と、ランドエルスに進学する生徒が出てくるのだ。

こう聞くと何だか不純な動機のように思えるし、頭の堅い伝統第一の帝国民からは、騎士官学校に相応しくない学校だと言われることもあるけれど。

ランドエルスの魅力は、良くも悪くもこの「緩さ」にある。

それに、帝国騎士になるつもりはあっても、厳しい校風が肌に合わない者も一定数いる。そういう生徒の為には、ランドエルスはうってつけだった。

そこに需要があるのなら、学校は運営することが出来る。

こうしてランドエルスは、ルティス帝国では珍しいタイプの騎士官学校として存在することになっている訳だ。
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