年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「なんて、朝から重苦しいお話をしてしまったわね。さぁ、朝食に行きましょうか。ギルバート様をお待たせしちゃうもの」

 重苦しくなった空気を感じ取って、私は出来る限りの笑みを浮かべて二人にそう声をかけた。いつもは下ろしっぱなしの髪を、今日は一つにまとめている。今日は土いじりをするつもりだし、こっちの方が動きやすくていいものね。

「……シェリル様」

 私がゆっくりとお部屋を出ていこうとすると、不意にマリンが声をかけてきた。なので、私は「どうしたの?」と言葉を返す。そうすれば、マリンは「私には、シェリル様とその異母妹の関係は、よく分かりません」と言ってきた。

「ですが、きっと、いつか。シェリル様のお気持ちは、異母妹の方に伝わると思います。……なんて、図々しいですよね」

 それだけを言ったマリンは、苦笑を浮かべていた。だけど、私にはその言葉はとても嬉しかった。そのため、私は「ありがとう」と笑みを浮かべて言う。

「……マリン。マリンの気持ちは、私には分からないわ。少なくとも、私はシェリル様のことを虐げた異母妹のことを許せそうにない」
「クレアの気持ちも、分かるわ。けど、シェリル様のお気持ちを優先するのが、私たちじゃない」
「……それ、は」

 クレアとマリンの、そんな会話が聞こえてくる。……二人のこういう言い合いは、あまり聞いたことがなかった。……私の所為、よね。そう思って私が心を痛めていれば、マリンは「行きましょうか」と空気を入れ替えるように、笑みを浮かべて言ってくれた。

「旦那様が、お待ちですし」
「……そうね」

 そうよ。ギルバート様をお待たせするのは、良いことじゃないわ。そう考えて、私がお部屋を出て廊下を歩いていた時だった。前から、サイラスさんが焦ったような表情で駆けてきた。

「……サイラス、さん?」
「大変です、シェリル様!」

 そして、サイラスさんはそう言って私の目をまっすぐに見つめてくる。その目には、何処となく怒りのような感情が籠っているような。そんな風に、私には見えてしまった。
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