年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「さぁ、ひとまず応接間に行きましょう。エリカの様子を、見なくちゃ」
「……はい」

 気を取り直すようにそう言って、私は歩を進める。その後、サイラスさんと合流し、どの応接間にエリカのことを通したのかを聞く。エリカを通したのは、普段商人を通すための応接間。なので、私は黙ってそちらに向かう。

 そして、応接間の前。やたらと大きな応接間の扉を前にして、私は一旦深呼吸をする。エリカは、一体どんな反応をするだろうか。私が未だに貴族の生活をしていることを、羨ましいと言うだろうか。きっと、そうよね。そう思って、私はゆっくりと応接間の扉を開いた。

「……お義姉様」
「エリカ」

 応接間の中には、質素なワンピースに身を包み、綺麗だった金色の長い髪を、肩の上までバッサリと切ったエリカが、いた。エリカは何処か気まずそうに、私からその水色の目を逸らす。……何処となく地味な印象を与える。だけど、エリカはエリカのままだった。

「……お義姉様は、いいわね」

 しばしの沈黙。しかし、エリカは意を決したようにそんなことを言う。それは、今まで散々私に叩いてきた憎まれ口で。

「こんなにも豪華なお屋敷に住めて、お姫様みたいな生活が出来て。……あ~あ、何処で道を間違っちゃったんだろう」
「エリカ」
「本当だったら、私がお姫様みたいな生活をしているはずだったのに。……お義姉様なんて、いつもみたいに俯いて暮らしていればよかったのに」
「……エリカ」
「本当に、お義姉様なんて大嫌いよ!」

 そう叫んだエリカだったけれど、その目は確かに潤んでいた。……だから、私はゆっくりとエリカに近づく。そして、エリカのことを抱きしめた。
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