年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第7話 拒否のち、条件
「……シェリル。何を、言っている」

 私の言葉を聞かれたギルバート様の返答は、そんなものだった。その声は何処となく不機嫌であり、エリカに好印象を抱いていないのは一目瞭然だった。そりゃあ、図々しく朝早くから訪ねてきたので、常識知らずだと思われても仕方がないけれど……。でも、エリカが困っているのならば、私は助けてあげたい。

「ギルバート様……。確かに、こんな朝早くから訪ねてきて、怒りを抱かれるのも分かります。でも……」
「そうじゃない」

 目を伏せて私がそう言えば、ギルバート様はただ淡々とそう告げられた。その後「シェリルを虐げてきた異母妹だろう? そんな奴、助けるに値しない」と低い声でおっしゃる。……そう、なのね。

「悪いが、帰ってくれ。シェリルを虐げてきた奴と、会話などしたくもない。……よくも、図々しくも顔を見せられたものだな」

 ギルバート様はそうおっしゃって、エリカのことを一瞥される。……ギルバート様のお気持ちは、嬉しい。けど、私はエリカのこともある意味の被害者だと思っている。それに、きっと――……。

「ねぇ、エリカ。お父様や、お義母様は?」

 嫌な予感がして、私はエリカにそう問いかけてみた。すると、エリカは私から視線を逸らし「……頼りになんて、ならないわよ」とボソッと言葉を零していた。

「お父様は、お酒に溺れてギャンブル三昧よ。お母様は、他の男性の元に出入りしているわ。私のことなんて、お二人とも気に留めない」

 エリカは何の感情も抱いていないような声で、そう告げてくる。……そう。大体、予想はしていた。だけど、予想以上に酷い状態だった。なのに、心は痛まない。唯一痛むことがあるとすれば、あんなにも可愛がっていたエリカを守ろうともしないことだろうか。
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