年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
(そう言えば……エリカは、どうしているのかしら)
姉妹と聞いて思い出すのは、私の異母妹であるエリカのこと。エリカは平民に落ちて、今は王都の街で暮らしていると聞いている。あの子は贅沢が好きだったから、もしかしたら平民としての暮らしには馴染めていないかもしれない。そう思って心配してしまう。……たとえ私のことを見下し、虐げてきた相手だったとしても。エリカは、ある意味の被害者なのだ。今の私は、そう思っている。
(たとえ、私からイライジャ様と魔力を奪っていたとしても。それでも、あの子のことだけは心の底から憎めないのよね……)
実父や継母は違う。心の底から嫌っているし、堂々とそう言える。でも、エリカは違った。エリカは幼い頃から、歪んだ教育を受けていた。それを、私は知っている。一時期はあの子のことを嫌っていたけれど、冷静になった今ならば分かるのだ。……あの子も、実父と継母の被害者だったのだと。
「シェリル様?」
「……いえ、なんでもない」
怪訝そうな表情でクレアがそう声をかけてくるので、私は苦笑を浮かべて言葉を返した。エリカのことを考えていたと言うと、クレアはきっと余計な心配をしてしまう。クレアも、もう一人の専属侍女であるマリンも。執事のサイラスさんも、私の婚約者であるギルバート様も。そして、他の使用人たちも。私の元家族のことを嫌っている。だから、エリカのことは話せない。
(あの子が、苦労していないことを願うしかないわ。……あんな教育を受けて、まともに育つわけがなかった。私は、それを理解するべきだった)
多分、私の元婚約者だったイライジャ様を奪ったのも、あの教育が原因なのだろう。エリカは、両親に認められるために私に勝つ必要があった。私よりも自分が優れていると両親に示す必要があった。
「あっ、そうだわ、クレア。一つだけお願いがあるのよ」
だけど、今更エリカのことを考えたとしてもどうすることも出来ない。だから、私はとりあえず気持ちを切り替えようとクレアに明るく声をかける。そうすれば、クレアは「どうかなさいましたか?」と問いかけてくる。
「私ね、今度はお花だけじゃなくて、果物の類も育ててみたいの。だから……その」
少し言いにくそうに視線を逸らせば、クレアは「良いですね!」と賛成してくれた。
「どうせですし、その果物が収穫出来ましたら、旦那様にお菓子にしてお渡ししましょうか!」
「そうね、いい考えだわ」
クレアの提案に、私はにっこりと笑う。果物は収穫までに時間のかかるものが多い。でも、中には普通のお野菜のような期間で収穫出来る種類もある。それならば、かなり早く収穫が可能なはず。
姉妹と聞いて思い出すのは、私の異母妹であるエリカのこと。エリカは平民に落ちて、今は王都の街で暮らしていると聞いている。あの子は贅沢が好きだったから、もしかしたら平民としての暮らしには馴染めていないかもしれない。そう思って心配してしまう。……たとえ私のことを見下し、虐げてきた相手だったとしても。エリカは、ある意味の被害者なのだ。今の私は、そう思っている。
(たとえ、私からイライジャ様と魔力を奪っていたとしても。それでも、あの子のことだけは心の底から憎めないのよね……)
実父や継母は違う。心の底から嫌っているし、堂々とそう言える。でも、エリカは違った。エリカは幼い頃から、歪んだ教育を受けていた。それを、私は知っている。一時期はあの子のことを嫌っていたけれど、冷静になった今ならば分かるのだ。……あの子も、実父と継母の被害者だったのだと。
「シェリル様?」
「……いえ、なんでもない」
怪訝そうな表情でクレアがそう声をかけてくるので、私は苦笑を浮かべて言葉を返した。エリカのことを考えていたと言うと、クレアはきっと余計な心配をしてしまう。クレアも、もう一人の専属侍女であるマリンも。執事のサイラスさんも、私の婚約者であるギルバート様も。そして、他の使用人たちも。私の元家族のことを嫌っている。だから、エリカのことは話せない。
(あの子が、苦労していないことを願うしかないわ。……あんな教育を受けて、まともに育つわけがなかった。私は、それを理解するべきだった)
多分、私の元婚約者だったイライジャ様を奪ったのも、あの教育が原因なのだろう。エリカは、両親に認められるために私に勝つ必要があった。私よりも自分が優れていると両親に示す必要があった。
「あっ、そうだわ、クレア。一つだけお願いがあるのよ」
だけど、今更エリカのことを考えたとしてもどうすることも出来ない。だから、私はとりあえず気持ちを切り替えようとクレアに明るく声をかける。そうすれば、クレアは「どうかなさいましたか?」と問いかけてくる。
「私ね、今度はお花だけじゃなくて、果物の類も育ててみたいの。だから……その」
少し言いにくそうに視線を逸らせば、クレアは「良いですね!」と賛成してくれた。
「どうせですし、その果物が収穫出来ましたら、旦那様にお菓子にしてお渡ししましょうか!」
「そうね、いい考えだわ」
クレアの提案に、私はにっこりと笑う。果物は収穫までに時間のかかるものが多い。でも、中には普通のお野菜のような期間で収穫出来る種類もある。それならば、かなり早く収穫が可能なはず。