年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「……それに、お母様は私を好色だと有名な老人貴族の元に嫁がせようとしたわ。そうすれば、私たちは貴族に戻れるっておっしゃってね。……信じられる? お相手、六十三だっていうのよ?」

 そんな言葉を零すエリカは、やけくそにも見えた。だから、私はエリカのことをただ抱きしめた。そんな私の様子を見られたからか、ギルバート様は「……六十三は、さすがにやりすぎだろう」とぼやかれていた。

「……エリカ嬢、だったな」

 私がエリカのことを抱きしめていると、ギルバート様は不意にエリカの名前を呼ぶ。その後「……正直、滞在させるのは気が進まない」と続けられた。

「だから、本音を言うと出ていって欲しい。シェリルにとって、悪影響があるかもしれないからな」

 ギルバート様がそうおっしゃると、サイラスさんは「そうでございます」とうんうんと頷きながら言う。

「だが、他でもないシェリルの頼みだからな。……条件付きで、滞在を許そう」

 しかし、ギルバート様は口元を緩めそうおっしゃった。……条件を付けてでも、滞在を許してくださる。よかった。これで、エリカのことを少しでも守れる。

「……条件って、どういうもの、ですか?」
「一つ目、シェリルのことを傷つけない。二つ目、滞在期間は最長で三ヶ月。この二つだ。これが守れないのならば、追い出すだけだ」

 エリカの問いかけに、ギルバート様は淡々とそう答えられた。そうすれば、エリカは「……お義姉様のこと、傷つけるつもりはないわ」と言って、私の目を見てくる。

「だって、私はもうお義姉様を傷つける必要がないもの。平民に落ちた今、お義姉様の足元にも及ばないわけだし。それは、分かっているつもり」

 静かにそう続けたエリカに対し、ギルバート様は「傷つけた場合は、即刻出て行ってもらうがな」とだけお言葉を残され、応接間を出ていこうとされる。しかし、最後に一度だけ振り向かれ「シェリル。朝食に行くぞ」といつもの優しい声を私にかけてくださった。なので、私は静かに頷く。
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