年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「あのね、お義姉様。私、落ち着いたら修道院に行こうと思うの」

 それからしばらくして、エリカはそんなことを告げてきた。それに驚いて「どうして?」と問いかければ、エリカはただ黙ってしまう。それでも、少ししてから「……この世に、絶望したから」なんて言ってきた。

「お父様もお母様も、頼りにならないし私のことを道具としか見ていないわ。そんなお二人から離れるには、修道院に行くことが一番だと思うのよ。……それに」
「……それに?」
「……私、不安なことが、あって」

 そう言って、エリカは不安そうに目を揺らす。ここで、その不安を問いかけてあげた方が、いいかもしれない。それでも、エリカはきっと教えてくれないだろう。それは、すぐに分かった。そのため、私は「……教える気になったら、教えて頂戴」とだけ言った。その言葉は正解だったのか、エリカはホッと胸を撫でおろした後「……分かっているわ」と言ってくれる。

「あのね、エリカ。あっちではウィリスローズを育てているのよ。今はまだお花が咲く時期じゃないけれど……咲いた時は、とても綺麗だったのよ」

 私が重苦しくなった空気を変えるように、明るい声でそう言えば、エリカは「……いいなぁ」なんて零す。

「私、お花だとウィリスローズが一番好きなの。……見てみたかった」

 苦笑を浮かべながら、エリカはそう言う。……見てみたかった、じゃないわよ。ここに滞在できるのは三ヶ月しかないけれど、それが終わってもいつでも来てくれればいいのに。そう、思ってしまう。

「エリカ。いつでも来ていいのよ」

 私はこのお屋敷の主じゃない。だから、まずはギルバート様の許可を取らなくてはいけないのだけれど。それは、エリカも分かっていたのか「……あのお方が、許可してくださったらね」なんて言ってくる。
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