年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「……どうして、エリカがここにいることを、知っているの……?」

 エリカがここに来たのは今日。だから、エリカがここにいることを知っているのは、このリスター家の人たちだけのはず。

「ねぇ、エリカ」

 私がエリカに声をかけようとした時、私は気が付く。エリカが、露骨に震えていたことに。その後「それ、捨てて!」とエリカは叫ぶ。

「エリカ、どうしたの?」
「……それ、多分、あの人からのものなの。だから、捨てて!」

 私に抱き着きながら、エリカはそう叫ぶ。だから、私はサイラスさんに「……とりあえず、遠くに置いておいてくれる?」と問いかけてみる。そうすれば、サイラスさんは「かしこまりました」と言ってくれた。

「ねぇ、エリカ。ここに来ることを、誰かに話したの?」

 例えば、お父様とかお義母様とか。

 私はそう問いかけるけれど、エリカはただ静かに首を横に振るだけ。……だったら、エリカの友人とか? そう思うけれど、いまいちそれは想像出来ない。

「……あの人、ずっと私のことを追いかけてくるの。……私の行動を、監視しているの……」

 震える声で、エリカはそう訴えてくる。……もしかして、それってストーカーとか、そういうこと、なのかな。

「シェリル様。とりあえず、彼女を落ち着かせましょう」
「……そうね、マリン」

 慌てて側に寄ってくるマリンの言葉に、私は頷く。エリカは私に抱き着きながら、ずっと震えている。その背を撫でながら、私はゆっくりと「大丈夫よ」と言葉をかける。それでも、エリカの震えは止まらない。

「クレア、とりあえず客間に連れて行こうと思うの。……準備、してくれる?」
「……かしこまりました」

 クレアは私の指示を聞いて、不満そうな表情をするけれど颯爽とお屋敷の方に向かってくれた。
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