年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「どうも、気まぐれにしか咲かないお花らしくて……なので、私もまだ咲いたところを見たことがないのです」
「そうなのか。……だが、シェリルが世話をしているんだ。きっと早くに咲くと思うぞ」
「でしたら、いいのですけれど……」

 私が眉を下げてそう答えれば、ギルバート様は「シェリルは土に好かれているからな」とおっしゃった。……土に、好かれている。それは良いように聞こえるけれど、実際は大変なことが多い。

 私の魔力は土にリンクしており、土が豊かな時は力がみなぎっている。しかし、その反面土の魔力が枯渇し始めると、私も体調が悪くなってしまい寝込んでしまうのだ。そういう風に魔力と自然がリンクした女性のことをこの王国では『豊穣の巫女』と呼んでいる。ちなみに、『豊穣の巫女』は発覚した際から力をコントロールする訓練を受けることが決められていた。そうすれば、自身がリンクしている自然に魔力を送ることが出来て、自然を豊かにできるから。……まぁ、私が『豊穣の巫女』だと分かったのはつい最近のことなので、まだ力をコントロール出来ていないのだけれど。

「いつか、土に魔力を送れるようになりたいです。そうすれば、困っている方を助けられますから……」
「そこは、努力次第だな。でも、シェリルならばすぐに出来るようになるさ」

 ボソッと零してしまった弱音に、ギルバート様はそんな言葉を返してくださる。ギルバート様は私のことをとてもよく分かってくださっている。だから、こういう風におっしゃってくださるのだ。それが嬉しくて、私はギルバート様の手に触れてみる。そうすれば、ギルバート様は驚いたように手を引っ込められた。

「……シェリル?」
「手、繋いではダメですか?」

 少し上目遣いになりながらそう言えば、ギルバート様は「い、いや、大丈夫、だ」と途切れ途切れにおっしゃって、手を差し出してくださった。……最近、ギルバート様の様子がおかしい。私が少し触れただけで、すごく動揺されるのだ。……もしかして、私のことを嫌いになってしまわれたのだろうか? そんな風に、不安を覚えてしまう。

(大丈夫よ。ギルバート様は、私のことを好いているとおっしゃってくれるじゃない)

 元婚約者とは違う。分かっている。分かっているのに、どうしても一度目の婚約破棄のことを思い出して、不安になってしまう。そんな私のことをどう思われたのかギルバート様は「俺は、シェリルのこと、好きだぞ」とおっしゃってくださった。
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