年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「……ギルバート様?」
「ただ……その、触れられると柄にもなくドキドキするからな。……だから、突然触れるのは止めてくれ。そうじゃないと、歯止めが利かなくなりそうなんだ」

 私の目をまっすぐに見られて、ギルバート様はそうおっしゃった。……よかった。嫌われていなかった。そう思って私は一安心すると同時に、ギルバート様にならばもっと触れられても構わないと思った。たとえ抱きしめられたとしても、口づけをされたとしても、それ以上のことだったとしても。私はきっと、ギルバート様にならば嫌悪感は持たない。

「……あの、触れてくださっても、構わない……です、よ」

 少し照れくさそうにそうお伝えすれば、ギルバート様は明らかに動揺される。その後「……冗談は、よせ」とおっしゃった。その視線は明らかに彷徨っており、私のことを見てくださらない。……本気だと、受け取ってくださらないのね。

「わ、私は本気です。本気ですから――」

 ギルバート様のことをまっすぐに見つめ返して、私が抱き着こうとした時だった。不意に「旦那様!」と誰かの声が聞こえてくる。そのため、私は驚いて身を引いた。そうすれば、このリスター家の執事であるサイラスさんが慌てたように私たちの方に駆けよってくる。

「あぁ、丁度よかった。シェリル様にも、関係のあることなのです」

 サイラスさんは、私のことを見つめてそう言った。……私にも、関係のあること? それは一体、何だろうか? そう思って私が怪訝な表情を浮かべていれば、サイラスさんは一通のボロボロのお手紙を見せてくれた。

「……シェリル様の、実父からのお手紙でございます」

 サイラスさんはそう言った後、私のことをただ心配そうに見つめた。
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