年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第3話 忌々しい手紙
「……お父様から」

 私はサイラスさんの持つそのお手紙を呆然と見つめながら、そう呟いた。お父様は、私をここに追いやった張本人。今は平民として暮らしていると聞いているけれど、上手くやっていないという噂も耳にしたことがある。多分、お金の無心とかそういうことなのだろう。……それか、私がまだこのリスター家を追い出されていないことが不満なのかもしれない。

「サイラス。それは捨てておけ」

 私の不安な気持ちが伝わったのか、ギルバート様はサイラスさんにそう指示を出された。その後「……シェリルに、変なものを見せるな」とおっしゃる。その気遣いが、私はとても嬉しかった。ここは、実家とは違う。私のことを愛してくださって、大切にしてくれる人たちがいる。だからもう、お父様のことは忘れたい。

「シェリル様、どうなさいますか?」
「……おい、サイラス」
「一応、あて先がシェリル様になっておりますので……」

 サイラスさんは眉を下げながら、私にそう問いかけてくる。なので、私はそのお手紙を受け取った。封筒はボロボロで、あて先の字は汚い。……お父様は、あまり字が綺麗な方ではなかった。それが懐かしくて、私を嫌な気持ちにさせる。……ここに来て、私はあの環境があまりにも酷いものだと知った。あの時は、あそこにいるしかなかった。けど、今は違うのよ。

「……シェリル」

 ギルバート様が、不安そうに私の名前を呼んでくださる。だから、私は……一思いに、その封筒をびりっと破いた。
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