【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「おぉ、旦那様もついにシェリル様のことを抱きしめられるようになったのですね……!」
「本当に、成長されましたね……!」
「……サイラス、クレア。お前たち、俺をなんだと思っている」

 私のことを抱きしめてくださるギルバート様に対して、サイラスさんとクレアは拍手をしながらそう言っていた。それを聞かれたギルバート様は、文句にも似たお言葉をぶつけられている。

「そりゃあ、ヘタレですかねぇ」
「年甲斐もなく女性を喜ばせる方法の分からない、三十代ですかね」
「クレアはともかく、サイラス、お前は……!」

 そんなことをサイラスさんに向かっておっしゃるギルバート様。でも、私はそういうことはどうでもよかった。ギルバート様が私のことを抱きしめてくださっているという現実の方が、大切だったから。

「ギルバート様」

 クレアとサイラスさんに対して怒っていらっしゃるギルバート様のお顔を、私は上目遣いで見つめてみる。すると、ギルバート様は露骨に息を呑まれていた。だから、私はたった一言「大好きです」という自らの気持ちを伝える。

「……シェリル」
「私、ギルバート様のこと大好きです。年の差なんて気にならないくらい、お慕いしております」

 少しはにかみながらそう言えば、ギルバート様は顔を真っ赤にされる。それを見ていたサイラスさんとクレアが、またしても「ヘタレ!」と言っていたのを、私は聞き逃さない。

(ギルバート様は、可愛らしいお方なのよ。そういうところが、好きなの)

 不器用で、可愛らしいお方。だから、私はこのお方のことが好きになった。こういうお方じゃなかったら――きっと、私はギルバート様に惹かれていなかっただろうな、なんて。
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