元カレ救命医に娘ともども愛されています
「へえ、大学時代の後輩ねえ」

ランチの席についた琴絵さんはコーンポタージュの大きなマグカップを傾け、唇をつけた。あちっと小さく悲鳴をあげて、すぐに離す。

「うん、円城寺くんっていうんだ。医者と患者の付き添いとして再会するとは思わなかった」
「で、食事に誘われた」
「……うん」

素直にうなずくと、琴絵さんがにいっと笑う。

「まんざらでもないって顔してる」
「そりゃ、仲が良かった後輩だからね。久しぶりに会って近況報告を聞けるのは嬉しいかな」
「向こうはそんな感じで誘ってないんじゃない?」

そう言われ、私はうーんと小首をかしげた。私を誘ってくれた円城寺くんの顔を思い浮かべる。好意があると感じたなら、それはやはり私が自意識過剰な気もする。
同時に、私の胸には甘い疼きがよみがえりつつあった。大学時代、彼に惹かれていたのは確かなのだ。

「月子、スマホにメッセージが来てるみたいよ。見てみたら?」

棚に置いたスマホをさして琴絵さんが言う。見れば、円城寺くんの名前が表示されている。

「……食事の誘い……。候補日と候補のお店」
「仕事が早いわね~」

茶化す琴絵さんをじとっと睨み、私は返信内容を考えるのだった。

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