元カレ救命医に娘ともども愛されています
「いえ! 結果立ち聞きみたいになってしまって……いえ、あんまりお話は聞こえてないと……全部は……」

この様子だと、類推できる程度には聞こえてしまっていただろう。

「ううん、桜田さん。巻き込んでごめんね。少し話をさせて」

話しておくのも責任のうちだ。そう思って、私は桜田さんに私自身のここ数年の話をした。オフィスではできなかったので、使っていない小会議室でかいつまんで説明した。
真優紀を授かった経緯も、和馬と離れた経緯も。そして彼の父親や元縁談相手が納得していない状況も。

「……娘さんのパパ、あの円城寺先生だったんですね。やだ、私の盲腸のおかげで再会したんですか?」
「そう……なるね。今更だけどありがとう、桜田さん」
「……しかしさっきの女性、ちょっと怖かったですよ。常軌を逸した雰囲気に見えたし、何かあったらまずいって近くに待機してたんですが、月子先輩の返しが鋭すぎて『オーバーキルだよ~』って余計心配しちゃいました」

桜田さんの苦笑いに私は慌てた。

「やっぱり返しがきつかった?」
「いえ、格好良かったです。それでこそ月子先輩です。でも突然ナイフとか出されると困るので、会社に押しかけたときは私を同席させてくださいね」

桜田さんは胸をどんとたたいて、請け負ってくれた。まったく頼りになる後輩だ。
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