元カレ救命医に娘ともども愛されています
その日の帰り道、警戒はしたけれど麗亜さんの姿はなかった。
桜田さんの言うとおり、確かに彼女は少々追い詰められた表情をしていた。真優紀への加害を匂わせるのも、怒りと不安を覚える。
一方で彼女はおそらく何年も前から和馬との結婚に夢を膨らませてきたのだろう。
和馬は結婚する気はないと断り続けていたものの、和馬の父親や彼女の親族は結婚に向けて動き続けていた。思い込みの強そうな女性だったし、結婚できるものだと固く信じてしまっても無理はないのかもしれない。
そこに私と真優紀の存在、そして和馬からの正式な見合いの断り。心の均衡を失っている可能性もある。
真優紀を迎えに行くと、ちょうど和馬も仕事をあがって保育室に迎えに来ているところだった。

「和馬、早かったね」
「今日はシフトの関係でね。その分、朝早かっただろ?」

真優紀を抱き上げ、和馬は私の顔色が悪いことに気づいたようだ。

「月子? 何かあった?」
「……帰ったら、話そう」

私の暗い表情に、和馬も重々しく頷いた。

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