元カレ救命医に娘ともども愛されています
「それじゃあ、今日私のところに来たのは麗亜さんの独断?」
「おそらくはそうだろう。彼女の両親はすでに新しい縁談を考えているはずだし、俺より有望な相手は山のようにいるよ」

新しい縁談は、麗亜さんが納得できないのだ。好きな人の心が手に入らないなら、彼女には無価値。だからこそ、自暴自棄な行動に出る可能性もある。

「私の身辺を監視していた人たち、もしかすると麗亜さんが手配したのかもしれない。今、私たちが同居しているのもわかっているんじゃないかな」

私は言い、和馬の顔を見た。

「監視から逃れるために和馬のマンションで同居を始めたけれど、かえって彼女を刺激しているんじゃない?」
「そうならないように、峯田家にもう一度話をつけてくる」
「同居を解消すれば、ひとまず彼女が落ち着くということはない?」

和馬が苛立ったように額に手を当て、うつむいた。

「そうやって彼女の機嫌を取り続けるのか? そのうち彼女をおとなしくさせるために、俺と彼女の交際を勧めるようになるのか? きみと真優紀の平穏のために……!」

そこまで言って、和馬はハッと顔をあげた。その罪悪感に満ちた表情に、私は悲しくなった。

「すまない、月子。そもそも、きみと真優紀の生活を脅かしているのは俺だ。俺の父親と俺の元縁談相手……、俺がきみたちを探し出さなければ、会いに行かなければよかったんだな」
「和馬……」
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