元カレ救命医に娘ともども愛されています
「相手を想って行動したつもりが、独りよがりの勝手な行動になっているのはよくあるんだと思う。あのね、私が二年前和馬から離れたこと、妊娠がわかっても言わなかったことは間違った選択だった。ごめんなさい」

和馬の前に回り込んだ。気づけば足元には真優紀が来ていて、私と和馬の足につかまり、じっと見上げていた。
真優紀に背中を押されるような気持ちで私は言った。

「和馬、あなたを変わらず愛してる」
「月子……」
「もう別れたのだから、近づいてはいけない。別々に生きるべきだと思っていた。だけど、この気持ちは捨てられなかった。あなたが望んでくれるなら、あなたと真優紀と三人で生きていきたい」

和馬の腕が私を引き寄せ、力強く抱きしめた。

「月子……、俺をきみの夫にしてくれるのか? 真優紀の父親にしてくれるのか?」
「ええ。もう強がったりしない。不安になったりしない。あなたが必要なの」

和馬の背に腕を回すと安堵で涙が出てきた。足元で真優紀が「らっこー、らっこー」と抱っこをせがむので、私も和馬も泣き笑いの顔で抱擁を一時解いた。ひざをつき、私が真優紀を抱きしめると、その上から和馬が包んで抱きしめてくれた。

「きみに苦労ばかりかけているのに、本当にいいのか?」
「もう逃げない。身を引いたりなんかしない。一緒に乗り越えるって決めた」

頬につたう涙に和馬がキスをくれた。優しいあの頃と変わらないキス。

「ありがとう、月子。愛してる」

ささやいた声は涙まじりに私の耳に届いた。
私たちはここからもう一度始めよう。恋人ではなく、家族として。

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