元カレ救命医に娘ともども愛されています
「そっか。月子も真優紀も、住所変更に方々出かけなきゃならないのは面倒だし、どうせなら苗字が変わるタイミングでやりたいよね」
「せっかくなので、新居を探そうと思っています」

琴絵さんの言葉に和馬が言った。

「都心は便利ですが、真優紀を育てるならもう少し落ち着いた場所がいいかなと思っています。琴絵さんや浅岡さんとも会いやすい位置で家を探そうかと考えているんですが、いかがですか?」

新居を探して三人で移り住もうという案は和馬からで、この先真優紀に弟妹ができたらあのマンションでは手狭だと思ったようだ。

「わあ、私たちは嬉しいよ。でも、和馬くんはお仕事に間に合うの? 急な呼び出しもあるんでしょう?」
「相当人が足りないときくらいですし、呼び出されて一時間以内にセンターに入れる立地を選ぶつもりです。それに、俺の先輩たちも結婚すると病院から離れた地域に家を買うケースが多いですね」
「そうかあ」

琴絵さんは頷き、私は彼女に向かって言った。

「琴絵さん、今まで家賃を折半してきたけれど、ひとりでここに住むのは大変でしょう。私が家を出るということは、琴絵さんも引っ越しが必要になると思うの」
「今すぐ引っ越さないっていうのは私への気遣いでもあったんだね。本当に月子は、子どもの頃からそういうところがある」

そう言って琴絵さんが浅岡さんをちらっと見た。

「いい機会だし、私らも同居しようか」

琴絵さんを見おろす浅岡さんの目が丸くなった。
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