元カレ救命医に娘ともども愛されています
「いいのかい? 琴絵は同居しないほうがいい距離でいられるって言ってただろう」
「私もアラフィフだし、創も一昨年お母さんを亡くしてからひとり暮らしでしょ。老後のことを考えるってのは気が早いけど、お互いの体調に何かあったときに近くにいた方が気づきやすいかなって思うのよ」

おそらく琴絵さんの希望でふたりは同居していなかったのだ。琴絵さんは浅岡さんには「いい距離でいたい」と説明したようだけれど、私と真優紀のことは絶対に枷になっていたに違いない。やはり、私と真優紀が琴絵さんの人生の道を変えてしまったのだ。
すると、琴絵さんがくるんと私に首をめぐらせた。

「言っておくけど、月子のために創と同居しなかったわけじゃないからね。勘違いして、勝手に責任感じないでよ」
「でも、琴絵さんは中学生だった私を育ててくれたし、真優紀のことも一緒に育ててくれた」
「そんなのは創と同居してもできたのよ。でも、月子と真優紀との暮らしを選んだのは私」

浅岡さんが穏やかな笑顔で頷いた。

「俺もそれで納得してきたよ。だから、月子ちゃんたちのことがなくても、琴絵がその気にならなければ同居を俺から言い出す気はなかったんだ。きっかけをくれた月子ちゃんと和馬くんには感謝だよ」
「まだふたりには乗り越えなきゃならないこともあるんだろうけれど、ひとまずおめでとうね」
「ありがとう、琴絵さん、浅岡さん」

私と和馬が頭を下げると、真優紀もまねをしてぺこっとお辞儀をした。

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