元カレ救命医に娘ともども愛されています
五月中に私と真優紀は和馬の家から引き揚げることになった。周囲をうろついている人は琴絵さんが見る限りではもういないそうだ。やはり麗亜さんの手配だったのだろう。
真優紀も一時的にかつての保育園への復帰が決まった。
まず私はプロジェクトに集中。和馬は忙しい中、新居を探してくれる予定だ。そして、少しでもお父さんと対話できるよう工夫してみるとは言っていた。現状、職場に圧力をかけるようなことはされていないようで、和馬は以前と変わらず勤務できている。
琴絵さんたちへの結婚報告の翌日、和馬が私と真優紀をリビングに呼んだ。

「これから兄に連絡をするんだけれど、ビデオ通話にするからふたりとも話してみないか?」
「お兄さんと? もちろん挨拶したいけど」
「それはよかった。結婚したい人だって話はしているけれど、なかなか会える距離にいないだろう」

和馬のお兄さんの翔馬さんは途上国で医療に従事していると聞いている。

「時差は大丈夫?」
「ルワンダの時差は七時間かな。あちらでは昼過ぎだよ」

和馬が準備をしている間、真優紀を抱いてそわそわと待つ。和馬がスマホをスタンドに置き、ソファの私たちの隣に座った。

「兄さん、見えるか?」

画面の向こうに男性の姿が映った。明るい髪色とはっきりした笑顔、和馬とは印象ががらっと違う。
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