元カレ救命医に娘ともども愛されています
『おう、見えるよ。はじめまして、月子さん、真優紀ちゃん。和馬の兄の翔馬です』

陽気な声もクールな和馬とは正反対だ。きょうだいがいない私としては、兄弟でこれほど雰囲気が違うということに驚いた。

「はじめまして、月子です。ご挨拶が遅くなりまして申し訳ありません」
『いやいや、俺がなかなか帰国しないのが悪いよね』

そう言って翔馬さんは真優紀に向かって手を振った。真優紀は普段スマホを見せていないので、小さな画面の中で動く人に興味津々。手を振られて、思わず身を乗り出し、私が焦る羽目になった。

「兄さん、あらためての報告なんだけれど、彼女と結婚するんだ」

和馬が堂々と言った。その横顔は自信に満ち溢れている。
翔馬さんが目を細めた。

『ああ、俺は祝福するよ。親父のせいで引き離されたふたりがようやく家族になれるんだ。兄として嬉しいよ』

そう言って翔馬さんは私に視線を向ける。

『月子さん、和馬や実家の者から話は聞いてる。父がのしたことを申し訳なく思っています。それでも、和馬と歩む覚悟を決めてくれてありがとう』

頭を下げられ、私は慌てた。翔馬さんが責任を感じるのは困る。

「いえ、とんでもないです。あの頃は私も勇気が足りなかったんです。再会した和馬さんと、お互い補い合って生きていこうと決めました」
「兄さん、俺たちは父さんに振り回されはしたけれど、別れも復縁も自分たちの意志だと感じていきたい。月子と真優紀となら、どんなことも乗り越えていけると思ったんだ」

和馬が私の肩を抱く。真優紀が私の膝から和馬の膝へ移動していった。
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