元カレ救命医に娘ともども愛されています
『そうか! 和馬は人当たりはいいけれど、あまり他人に心を開かない子どもだった。そんなおまえを変えてくれたのが月子さんなんだなと感じるよ』

翔馬さんの言葉に、私が涙ぐみそうになっていた。和馬の人生に影響を与えてしまったという気持ちはまだ私の心にある。だけど、それは歪めたり捻じ曲げたりしたのではなく、いい影響もあったのかもしれない。
翔馬さんとはそれから色々な話をした。彼の休憩時間の十数分だったけれど、最後には真優紀と手を振り合って別れていた。

『結婚式には必ず行くからな』

そう聞こえて通話は切れた。

「結婚式……かあ。予定はないけれどね」

私がぼそっと言うと、和馬は真優紀を抱き上げながら言う。

「でも、琴絵さんもきっと月子の花嫁姿を見たいんじゃないかな」
「どうかなあ」
「俺は見たいよ、月子のウエディングドレス」

そう言って和馬は微笑む。それから真優紀のお腹に唇をあて、ぶぶぶっと振動させる。真優紀が大きな笑い声をあげた。

「真優紀も可愛いドレスを着てほしいな」
「あーいー」

真優紀はきゃっきゃ笑いながら、和馬の頭にしがみついている。

「結婚式かあ……」

和馬のお父さんを無視する形になるのだろうか。それならやらないほうがいいようにも思う。一方で、確かに琴絵さんは私が式をあげたら喜ぶだろう。

「少し考えさせて」

和馬と真優紀の記念になるならとは思うけれど、私自身はどうなのだろう。

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