元カレ救命医に娘ともども愛されています
真優紀はじっとケージの中を見る。すると、虎がぱちりと目を開けた。のっそりと起き上がった瞬間、近くの子どもたちが歓声をあげ、真優紀もつられて「あー!」と叫んだ。
虎を指さしているので、一応動物の動きに反応しているのだろう。
虎はのしのしと子どもたちの前を歩いて行き、開けたところに置かれた餌の肉をかじりだした。
「ごはんみたいだね」
「ごあん」
「そう、おいしいおいしいって食べてるよ」
そんなふたりに私はカメラを向けた。和馬から借りた一眼レフカメラ。和馬の三十一歳の誕生日を記念にたくさん撮影しておくのだ。
私のものは家にしまってあるので、和馬が自分のカメラを引っ張り出してくれた。久しぶりに手にするずっしり重たい感触に、懐かしさと嬉しさがこみあげてくる。
「真優紀、ママの方見てごらん。ママがカメラでカシャってしてくれるよ」
「まーまー!」
真優紀が和馬の腕の中で手を振り、和馬が笑う。
シャッターを切りながら、改めてふたりが親子なんだなと感じた。産まれたばかりの頃は私に似ていると思っていた真優紀だけれど、和馬と並んだ笑顔はそっくりだもの。
「真優紀、和馬、もっとくっついて」
滲んできた涙をそっと拭いたのは、ファインダーが見えなくならないようにだった。
虎を指さしているので、一応動物の動きに反応しているのだろう。
虎はのしのしと子どもたちの前を歩いて行き、開けたところに置かれた餌の肉をかじりだした。
「ごはんみたいだね」
「ごあん」
「そう、おいしいおいしいって食べてるよ」
そんなふたりに私はカメラを向けた。和馬から借りた一眼レフカメラ。和馬の三十一歳の誕生日を記念にたくさん撮影しておくのだ。
私のものは家にしまってあるので、和馬が自分のカメラを引っ張り出してくれた。久しぶりに手にするずっしり重たい感触に、懐かしさと嬉しさがこみあげてくる。
「真優紀、ママの方見てごらん。ママがカメラでカシャってしてくれるよ」
「まーまー!」
真優紀が和馬の腕の中で手を振り、和馬が笑う。
シャッターを切りながら、改めてふたりが親子なんだなと感じた。産まれたばかりの頃は私に似ていると思っていた真優紀だけれど、和馬と並んだ笑顔はそっくりだもの。
「真優紀、和馬、もっとくっついて」
滲んできた涙をそっと拭いたのは、ファインダーが見えなくならないようにだった。