元カレ救命医に娘ともども愛されています
「お夕飯の材料は琴絵おばちゃんが買ってくれてるから、真優紀とママは急いで帰って冷たい麦茶を飲もうね」
「ねー」
真優紀が返事をし、信号機を指さす。交差点の歩行者信号が青になったのだ。
歩き出そうとしたとき、横から中年の女性が声をかけてきた。
「あの、すみません。ここに行きたいんですけれど、これは駅の反対側でしょうか」
歩みを止めるように、スマホを目の前に差し出して見せてくる。急いでいると断りづらい勢いで、私はつい足を止め、画面を覗き込む格好になってしまった。
「ええと、ここは」
引っ越してきて数年。真優紀と散歩はするので土地鑑はあるけれど、指し示すビルの名前まで憶えていない。女性が持つスマホがぐらぐらと安定しないので、地図をよく見るために受け取った。
「あ、わかりました。駅の反対側で、一階に整骨院が入っているところですね」
「反対側……。駅の中を抜けていくのが近いのかしら」
「あとはぐるっと回った左の道に踏切があるのでそちらからでも近いですよ」
私はスマホを女性に返し、駅を振り返るように上半身をねじり、道を指し示した。
その瞬間だ。ベビーカーのハンドルが私の左手から奪われた。私の死角から走ってきた何者かがタックルするようにベビーカーを奪ったのだ。青信号が点滅する交差点にベビーカーごと躍り出ると一目散に走っていく。
「真優紀!!」
すさまじい恐怖を覚え、私は叫んだ。
「ねー」
真優紀が返事をし、信号機を指さす。交差点の歩行者信号が青になったのだ。
歩き出そうとしたとき、横から中年の女性が声をかけてきた。
「あの、すみません。ここに行きたいんですけれど、これは駅の反対側でしょうか」
歩みを止めるように、スマホを目の前に差し出して見せてくる。急いでいると断りづらい勢いで、私はつい足を止め、画面を覗き込む格好になってしまった。
「ええと、ここは」
引っ越してきて数年。真優紀と散歩はするので土地鑑はあるけれど、指し示すビルの名前まで憶えていない。女性が持つスマホがぐらぐらと安定しないので、地図をよく見るために受け取った。
「あ、わかりました。駅の反対側で、一階に整骨院が入っているところですね」
「反対側……。駅の中を抜けていくのが近いのかしら」
「あとはぐるっと回った左の道に踏切があるのでそちらからでも近いですよ」
私はスマホを女性に返し、駅を振り返るように上半身をねじり、道を指し示した。
その瞬間だ。ベビーカーのハンドルが私の左手から奪われた。私の死角から走ってきた何者かがタックルするようにベビーカーを奪ったのだ。青信号が点滅する交差点にベビーカーごと躍り出ると一目散に走っていく。
「真優紀!!」
すさまじい恐怖を覚え、私は叫んだ。