元カレ救命医に娘ともども愛されています
「この前、私の後輩を助けてくれた円城寺くん、格好良かったよ。救命って、すごくピリピリした現場なのかと思ったら、みんなすごく冷静で素早くて、そんな中できみはてきぱき指示を出してた。立派なお医者さんになったなあって感動しちゃった」
「月子さん、目線がお母さんですよ」
「だって、突然の再会で驚いた上に、きみがあんまり格好いいお医者さんになってるから……」

円城寺くんがグラスを置き、じっと私を見た。その視線に感じる熱量は、後輩が先輩に示すもの?
戸惑う私に、彼は言った。

「再会、偶然だったかもしれないですけど……俺は嬉しいです」
「え、あ……それは、私も嬉しいよ……」
「また、誘ってもいいですか?」

真摯な言葉に私は狼狽え、それからこくりと頷いた。



それから、私と円城寺くんは週一回程度会うようになった。決まって彼が誘ってくる。場所は気軽なレストランや、ラフなバルやダイニングバー。恋人がいるわけでもないし、彼は仲が良かった後輩。断る理由はない。
会えば話は尽きないし、会わなかった六年少々がなかったかのような錯覚も覚える。大学時代から、片時も離れなかった友人のような感覚だ。
一方で私の心にはあの頃の想いがよみがえりつつあった。円城寺くんに惹かれていた大学時代。口に出さず、離れた若い日。
今一緒に過ごせるのが夢のようで、さらに彼の目に優しい情熱が見えるたびに期待してしまう。
もしかして……そんなふうに思ってしまう。
< 13 / 71 >

この作品をシェア

pagetop